最近初回レッスンに来られたクライアントさんに、数年間ボイトレスクールに通っているけれど、中々成長を感じられないことに悩んでお問い合わせいただいた方が数名いらっしゃいます。
その方々は住んでいる場所や地域は全く違うのですが、それぞれスクールでの指導のされ方は非常に似通っていて、少し聞いただけでも「それじゃ中々成長しないだろうなぁ」と思いました。
どんな指導だったのかというと、めちゃくちゃシンプルにまとめると『できないことをできるようにするためのレッスン』でした。
それって普通じゃないの?と思うかもしれませんが、大抵の能力(発声だけに関わらず)は、最終的にできなかったことができるようにはなりますが、その過程での練習や訓練はあくまでベイビーステップで、いきなりできなかったことをやろうとして上手くいくものではありません。
できることを広げる工夫が必要
冒頭で書いたクライアントさんたちがされていた指導は、どれも「それぞれの状態に効果的であろう方法を延々とやるだけ、その後歌って改善点を伝えられる」というものでした。
基本的にどれも1つの練習方法を「こんな感じで」とか「◯◯を意識してみて」といったアドバイスを受けながら、狙った状態を作ろうとする方向性です。
これらが全て悪いとか、意味がないということではありません。しかしスキルを向上させるための練習方法としてはかなり手探りになり、非効率的なのは間違いありません。
じゃあどうすればいいのか?答えは簡単で『今できることから狙った状態に広げていく』ということです。
冒頭で書いたようにどんなスキルでも、開発するときはベイビーステップです。まさしく赤ちゃんが仰向けで寝ていることしかできない状態から、寝返りをしだし、徐々にハイハイを始めて・・・という段階を経ていく必要があります。
赤ちゃんが仰向けて寝ている状態から、いきなりつかまり立ちをしたり歩き出すことはないように、どんなスキルもいきなり今まで全く起こしたことのない状態を、じゃあやってみましょう!で探っても、ほとんどは上手くいかないということです。
今できることと狙った方向を見定める
例えば歌を歌っていると高音部分になるとどうしてもフラットしてしまう、裏声の練習なんてしたことがないという状態の人がいるとして、それを改善するために裏声の練習を勧められたとしましょう。こんな感じの発声↓だとします。
これをじゃあ真似してみましょう!と指導され、あーでもないこーでもないとお手本のように発声しようと探っただけでは、恐らく状態が好転していく人はごく限られた少数だけです。
なぜならその人が今できることと、狙った状態があまりにも乖離しているからです。つまり仰向けで寝ている赤ちゃんにいきなり立ち上がったり、歩くことを強いている状態だからです。
では具体的にどうすればいいのか?
うちのブログにはそんな時のために、いくつもヒントとなるようなことを書いているつもりです。例えばこの記事↓のような発声から探ってみるとか。
何なら状態によっては、裏声を出せるようになりたいのに、地声から探っていくのが効果的だったということも全然ありえます。
効果的な成長を望むのであれば、まずは普段の喉の使い方と、そこからどれくらい状態を変えられるのか、その変えられた状態の中で訓練的な効果・価値のある状態はあるのか、そしてそれらを正しく繰り返せるのか、これらをバランスよく考えて実践する必要があります。
まとめ:できるできないの択一的な練習を避ける
レッスンをしていると、紹介した練習方法がそのまま再現できて、じゃあこのまま繰り返してくださいね~なんてお伝えできることは本当に稀です。
どの練習方法も、ここが上手くできてないとか、狙った部分が動いてないとか、何かしら足りてない状態になっていることがほとんどです。
そこから、じゃあこうしたらどうでしょう?と強度を調整して、上手く再現できそうなレベルまで調節するのがトレーナーの役割です。
ボイストレーニングのレッスンを受けていて『できてる』『できてない』ということしか伝えられないのであれば、どの程度まで許容できて、それがどの程度、訓練的な価値・効果があるのかということを聞いてみましょう。
具体的な答えが返ってこないのであれば、いくら続けても時間とお金を無駄にしてしまうだけかもしれません。