何度もブログで書いているし、Twitterでも何度か言及しましたが、声というものの扱いの難しさ、特に操作したり訓練すると物凄い難易度になっちゃうのですが、今回はその原因について解説してみようと思います。
このブログ記事の内容が、開設当初から比べるとどんどんと訓練のテクニックから、メンタル寄りというか練習の仕方やもしくはそれを続けるという方向にシフトしていっている理由もこの記事を読んでいただければ分かってくると思います。
何度も書いているけど再度おさらい
声というのは『見えない』が多い
当たり前ですが音というのは空気の振動であり、目には見えません。
加えて声はそれが発せられている場所やその瞬間も目に見えません。
楽器の場合
多くの楽器の場合、何かしらを叩いたり弾いたりして音を発生させますが、それが行われている部分は目に見えます。
ギターやベースであれば、弦を弾くところは目で見えるし、ピアノもそうですね、鍵盤を押さえればその瞬間ハンマーが弦を叩いて音が出ます。ドラム等の打楽器も同じです。
そういう意味では管楽器が一番声に近いでしょう、音を出すという部分の構造自体は同じようなものなので。
声の場合
しかし音を発生させる原理自体は同じ管楽器でも、声と大きく違う部分があります。
それが声の場合は楽器自体が目で見えないという部分です。
というかそもそも声という楽器の場合は、どこをどう操作したらどういう音が出せるか、そしてその操作の仕方すらも現状分かってないことがたくさんあるという、はっきり言えばものすごく不透明な楽器です。
完成された楽器であれば、ここを押せば~とかこう操作すればこの部分がこう動いて~というのが当たり前ですが分かっています、そういった操作を洗練させて音を奏でるということを自由自在にする訓練をしていくわけですから。
しかし声の場合はそれが全く出来ないわけです、外部から押したり引いたりしても音は出ないし変わりません。
さてここまでが記事の内容を理解するために必要な事前知識です。声っていうのはそういう超不透明で『見えない』『分からない』が多いものだということですね~
操作方法すらろくに分かってないのに・・・
「こういう声出しましょう!」とか言われても到底無理なわけで・・・
だって音を出す所も見えない、それを操作するのも分からないという状態ですから。他の楽器であれば、たとえばギターだと
- 何弦を操作するのか
- 弦を弾く強さや角度
- 弦を押さえる強さや場所
等など、素人の私でさえ音を出すのに重要であろう部分というのはこれくらい思いつきます。そしてそれらは実際に目で見えるんです。
なので文字での説明や練習方法を紹介しても、文字を読めないか読み間違えない限り、伝える側の想像している音と、受け取った側が実際にやってみて出てくる音は大きく違わないでしょう(楽器が違ったり同じ言葉でもイメージが違うので全く一緒にはならないでしょうが)。
実際に行う操作を文字でも説明出来るか否か
ここで重要なのは実際に行う操作を文字でも説明出来るかどうか?という部分です。
さてでは声はこれが出来るでしょうか?
もうお分かりですね、出来ないんです。高い声を出したいなら輪状甲状筋を使って声帯を引っ張って~というのは分かっていても、じゃあそうするためにどこをどう動かしたらいいの?というのは文字では伝えられないんです。
なぜなら喉という楽器は見えないし、そもそも細かい操作(手や足のような動き)が難しいものだからです。
喉という楽器に与えられた役目
『喋る』ときにも使われます
そんなどうやって音が出てるかも多くの部分で不透明な喉という楽器から発せられる声ですが、これのもう一つの難しさというのが、この楽器は歌うためだけに使うものじゃないということです。
というか現代を生きている我々は、歌う機会よりも圧倒的に喋る機会の方が多いですよね。
そしてそれがどういう事になるかというと、意識していない内に喉には喋る場合の使い方が癖付いていることがすごく多いということです。
この喋り声からの癖というのも楽器の操作に影響するとなると、それはもうどんな状態なのかなんて文字だけでは全く想像も出来ませんし、それを上手く導くというのは魔法というか神通力みたいなものを持ってないと出来ないでしょう。
喋り声=地声/チェストボイス?
喋っている時点であまり声帯を閉鎖させずにウィスパー気味に小さな声量のAさんの『喋り声』と、普段から声が大きくてよく「もう少し声抑えて」と言われるBさんの『喋り声』は全く違います。
しかし例えばよくある『地声/チェストボイス』というものを文字で説明しようとしたら『喋り声で楽に出せる低音域』みたいな超ルーズな説明になっていることが非常に多いです。
こうなると同じ『地声/チェストボイス』を出そうとしているのに、二人の声や喉の状態は全く違うものになっています、こういうようなことがこの例以外でもそれはもう沢山起こってしまうわけです。
基準がないが故にどうにでも転がる怖さ
言葉ではなんとでも書けるし言えるし受け取り方は無限
「喉で歌っちゃダメ!」と言われた人が、地声と呼べるだけの最低限の筋肉の緊張すらもさせないように過剰に力を抜いて発声しようとしちゃうなんて例は山のようにありますし、そういった人を数多く見てきました。
こうなってしまうのもつまり、声の状態という不透明なものを、イメージや言語化によって非常に限定された状態のみを指して、その中でしか良し悪しを計ってないからです。
何をもって喉で歌っているのか?その喉で歌うという際に表出されるのはどんな音なのか?というかそもそも喉で歌っちゃダメってどういうことなのか?
などツッコミどころが山のようにあるんですが、それを鵜呑みにしてあーでもないこーでもないと試行錯誤しちゃうと↑で書いたような過剰に脱力した声が正解と思っちゃうわけです。
しかしそれだと現在定義されている上での地声/チェストボイスは一切出せてないということになります。
よくネット上に見られるボイストレーニングの迷宮
その状態で例えば歌う際に高音域が苦しくなるという悩みがあったとして、それを解決するためにネットで色々調べた結果ミックスボイスというのが必要らしい!
ミックスボイスとは地声と裏声を混ぜたものだ!じゃあ地声(喋り声)はもう出せるから、裏声を練習して混ぜていこう!
なんてもうすごい規模の迷宮に入り込んじゃう人がたくさんいます笑
↑の例でもツッコミどころ満載なのですが、まぁうちのブログを読んでくださっている方であればどこがおかしいのかは分かるでしょう。
まとめ:実際に聞いてみないと分からない
というか実際に聞いてみたとて、音を出す部分は相変わらず見えないので、超難しいことには変わりないんですが、文字だけであれこれするというのはもう全くもって無理です。
加えて前提条件が人によって違いすぎるというのも理由の1つです、そしてその前提条件は喋り声、つまりどういった日常生活を送っているのかにも大きく左右されます。
なので見えない向こう側では想像もしていない声を出しているかもしれないということを頭の片隅に置いておく必要がありますね。
そんなこともあり、文字や図での説明にも限界を感じているため、当ブログでもそういった解説がだんだん少なくなっております。
しかし徐々に音声を使用したコンテンツを始めようと考えているので、期待せずにお待ち下さい(まぁ音声を使用したとて“あなた”がどんな声なのかは相変わらず変わらないんですが笑)。
ということで今回はここまで!