個人レッスンをしていても、複数人でのレッスンや小規模なセミナー的なものをしていると、結構な割合でいらっしゃるんですが、説明やデモンストレーションを聞かずにずっと自分であーでもないこーでもないと声を出して試行錯誤される方がいます。
この記事は超端的にまとめると「そういうことは止めましょう」ということなんですが、なんでやっちゃダメなの?ということを解説していこうと思います。
よろしくない理由としては大きく分けて2つあります。
繰り返しのメリット・デメリット
1つ目の理由ですが、これは脳の仕組みに関することですが、狙っていない、つまりは不正解の状態を繰り返すという行為自体に大きなデメリットがあります。
脳は行っていることが「良い・悪い」とか「狙ってる・狙ってない」という判別はできません。そしてここが重要ですが数多く繰り返された動きの神経回路を強化します。
記事冒頭に書いたような話の際も、デモンストレーションも聞かずに、小さい声であれこれと試行錯誤するという行為の中で、果たしてどれくらい狙った状態を作れているでしょうか?
恐らく狙ってない状態を再現している時間の方が圧倒的に長くなっているはずです。ということはつまり正解ではなく、そこに至るまでの間違いや少しズレた状態を覚え込まそうとしているということになります。
狙ってやってなかったとしても、それがただの試行錯誤の連続だったとしても、正解よりも多く不正解を繰り返しているのであればその動きを強化してしまうということです。
何度かこのブログでも書いていますが、発声訓練というのは、それまでの使い続けていた固着した発声状態を避け、新たに狙った発声ができその範囲をいかに増やしていけるかということなのですが、この固着した発声状態というのは文字通り固着しているわけで、簡単に切り離せるものではありません。
なのでこれから書くもう1つのダメな理由と合わせて、よくよく聴いてイメージしてから、狙いすまして発声しそれを繰り返すということが重要で、ただなんとなくあれこれと惰性で発声しまくってしまうのは良くないということです。
聴くということの重要性
発声だけにかかわらず様々な芸能の指導では、古今東西「まずはよく聞け or 見ろ」ということが本当によく言われます。
とりあえず出してみようとか真似してやってみろってなるような気がしますが、まず出せ or 動けとはならないんですね。じっくりしっかり聞く・見る。身体を使うスキル習得であれば常にそこから始めるということです。
初めてやる、ましてや何らかの癖や固着がある中で訓練するのであれば、全く手探りで当てずっぽうでやって上手くいくわけがありません。なのでまずはそのお手本をしっかり飽きるくらい見聞きするということからスタートします。
個人的な意見ですが、私はレッスンやその録音などの自分用にデモンストレーションされたものを利用しての練習であれば、聞くのと発声することの割合としては「聞く6:出す4」くらいの割合でいいと思ってます。指導者によっては5:5くらい、なんなら3:7くらいでも良いって人もいます。
それくらいよく聴いて、自分だったらどういう意識でどうやって出せばいいんだろう?と考えて、出し方をイメージしてから出す、このステップを繰り返すというのが非常に重要です。
ぼんやりイメージしているだけでは、脳は新たな動きをしようという挑戦モードにならず、これまで通りの惰性モードから切り替わってくれません。
これがよく聞かずにずっと自分の感覚やイメージだけで出しまくってしまうことのダメな理由その2です。
しっかりイメージして狙ってやっても上手く出ないんだけど?
「わかったわかった、よく聴いてしっかりイメージして出しゃいいんだろ?でもそうやっても狙い通りの発声できないんだけど?どうやって練習すりゃいいの?」
となるかもしれませんが、狙い通り発声できないのは当たり前です、だから癖であり固着しているということなんですし。
ただ重要なのは少しでもこれまで通りの状態と距離が取れるかということです。
惰性で連発するのはほとんどの場合がこれまで通りの発声状態です。それを繰り返し補強してしまうのがダメだということです。
なので少しでもこれまで通りの状態から距離が離すことができればそれでOKです。それを繰り返してこれまでとは全然違うことができていくわけですから。
そしてこの少し距離を離すということですら、しっかり見て聴いてということを意識して、毎回照準を合わせ直しながらやる必要があるということです。
おわりに
- 試行錯誤は素晴らしいですが、その中で狙ってない状態を数多く繰り返せばそっちを覚えちゃいます
- デモンストレーションや解説はしっかり聴いて、一度明確にイメージしてから出しましょう
レッスンを受けている人も、何らかの教材で独習しているという人も、よく聞くということと、適当に連発しないということを意識するだけで結構成果が変わってきますのでお試しください。
ちなみに慣れ親しんだ練習方法や発声状態であれば、どれだけ連続で、そして速く、もしくは無茶苦茶に出しまくれるかということでその練習の強度をコントロールすることができますので、正解を探っている状態じゃないのであれば、この記事に書かれた限りではありません。