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元々あるスペース(押入れ・クローゼット)を使って防音スペースを作るときのヒント

自作防音室の作り方
Image by promofocus from Pixabay

こちらのページで随時募集している質問へのより詳しい回答記事になります。質問内容とざっくりとした回答は以下の通りです。

  • 押入れ防音について質問した者です。早速ご回答していただきありがとうございます!

    作りだす前に木田さんに質問してよかったです、というのも木田さんが回答したような、壁に遮音シートをタッカーで貼り付けようと考えていました…

    何度も質問して申し訳ないのですが、木田さんだったらどういう風に作るか改めてお聞きしたいです。

    回答されたような壁をどうやって押入れの壁自体とくっつけるのかなどを詳しく知りたいです!
  • 以前に防音室の作り方に関しては記事にしてまとめていますので、まずはそちらをしっかり読み込んでいただけたらと思います。

    ただ元々あるスペースに防音加工する方法などは紹介・解説していないので、また今後防音に関するまとめ記事的なものを作ろうと思います。

    それまでしばらくお待ち下さい。

    ちなみに押入れの壁に防音壁を固定する方法はいくつかあって、元から防音壁自体をL字で制作し、それを押入れに接地するか、押入れの中にラブリコと呼ばれる天井と床を突っ張るようなものを使って柱を立てて、そこに新たに壁を制作するかなどです。

今回は元々あるスペース、押し入れやクローゼットを利用して、ボイストレーニングやレコーディングなどができる防音スペースを作る際の注意点やヒントについて解説していきます。

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やっても効果のない防音加工

めちゃくちゃ単純なイメージですが、こういった押入れみたいなスペースを加工して、防音できるようにしたいと考えたとしましょう。

すると最初に紹介した質問者の方のように、このスペースの壁に直接遮音シートなどを打ち付けて、その上に吸音材を貼り付けてしまう人がかなり多くいます。

こういう状態ですね。上の画像では左面だけに遮音シートを貼った状態ですが、これを全面に貼り、その上に吸音材をグルーガンや接着剤で貼って完成!としている人が多くいるということです。

これ、このスペースに入って音を発した場合、表面的には吸音材が張り巡らされているわけなので、なんとなく音が小さくなった気になりますが、このスペースの外側には結構音が漏れています。

厳密に言えば、数デジベルは減衰できているかもしれませんが、それだけです。ほぼ誤差の範囲であるといってもいいでしょう。

ではこういうスペースで防音加工するにはどうするのか、あくまで一例の紹介ですが、同じように画像を使って解説していきます。

防音に一番必要なのは「重さ」

このブログでも防音室に関する記事で何度も書いていますが、防音に一番必要なのは重さです。軽い素材のみでは多少吸音できることはあっても、音を十分に防ぐというのは無理です。

ただDIYレベルでなるべく重い素材を使ったり、それを加工して設置するというのは現実的ではないので、そもそも難しい話ではありますが、なるべく重くなりすぎない範囲で、DIY初心者や始めてそういう作業をするという人向けに、そこそこ防音できるようにするには?というシミュレーションしてみます。

まずは質問への回答で書いていますが、木材で柱を立てていきます。

この柱はそこそこの厚み(30mm以上)があればなんでもいいです。入手しやすいものだとやはりツーバイフォー材だと思います。

そういった木材に突っ張れるようにするアジャスターを取り付けます。回答文には「ラブリコ」というアジャスターを書いていますが、このラブリコは形状的にいくつか種類があり、一番有名な形のものだと、後に解説する材料を柱に打ち付けにくくなる形状をしているため、できるだけ柱から出っ張りがでないような形状のものが好ましいです。

このタイプであれば問題ないです。また柱をツーバイフォー材ではないサイズの木材にする場合は、ボルト・ナット・ワッシャーを使い、柱にする材に穴あけなどの簡単な加工をすることで、そこそこ簡単に突っ張れる機構を作ることもできるので、その場合は「自作 ディアウォール」や「自作 ラブリコ」などで検索して調べてみてください。

それらを柱に取り付けたら、スペース内に突っ張って設置・・・の前に、その柱の奥側、つまりスペース内の壁側にあたる方に、遮音シートを打ち付けましょう。

こうなるイメージです。実際はこの遮音シートの部分を、廃棄する際のことを考えないのであれば石膏ボード、廃棄する際の手間を考慮したり加工性を考えるのであれば9mm以上の合板を柱の背面側に打ち付ける方が、より防音効果が高まります。

ただそうなると一気に作業難度が高くなるし、費用も嵩むので、今回紹介する方法ではそこそこ効果が出るし、後に解説する吸音材の接地面を確保するという意味で遮音シートを使います。

ここまで来たら後は防音の際に必要な素材をスペース内から貼り付けていくだけです。

遮音シートに吸音材を取り付けます。これは結構なんでもいいです。高い何万円もする吸音材は必要ないです。使いやすいようにガラスクロスで包まれたグラスウールやロックウールでもいいですし、なんならこの柱となる材の厚みの半分くらいあるものであればクッションなどに使用されるウレタンフォームなどでも効果はあります。

後ほどこの上から有孔ボードを貼って完成になるので、グラスウールやロックウールでも、むき出しの物は使用しちゃだめです。飛散してえらいことになります。

おすすめは私自身、防音室を作った際に使った吸音ウールです。この製品はグラスウールやロックウールのようにむき出しで使ってもチクチクしません。

ということで吸音材となるものを遮音シートの次の層として設置します。この上に最後の有孔ボードを貼って完成となりますが、この有孔ボードと吸音材との間は少し隙間、つまり空気層がある方が防音的には効果があるとされています。

なので吸音材をバツバツに入れて、それを抑え込むように有孔ボードを取り付けるよりは、数センチ有孔ボードの裏側に隙間を作るよう吸音材の厚さを調整すると良いかもしれません。

そして最後はこういう状態になれば完成です。ただ当たり前ですが、これだと左側の壁面が完成しただけなので、実際にはこれを全ての壁、天井に作る必要があります。

できれば床も今回紹介した壁面と同じような構造作って設置したほうが効果は高まります。ただ床面は人が乗ったりで荷重がかかるので、骨組みとなる材を増やす必要もありますし、床面になる部分はかなりぶ厚めの合板を使用する必要があります。

また床を作って、その床の上に壁面を乗せるような形で全体を作るのか、先に壁面を作って、その内側の狭くなった空間分の床面を作るのかで各々のサイズや作る手順などは大きく変わります。

天井もスペース自体の広さやどれくらいの防音効果を狙うかによって、作り方・構造が大きく変わるため、都度調べて考えながら作るしかありません。

なので何度も書きますが、あくまで作り方のヒント、一例です。

ドア部分を作る際のヒント

こういう押し入れやクローゼットというスペースの場合、基本的にはドアとなるパーツは元々あると思いますので、それを加工するということを考えると思います。

ただ原状回復の観点や、加工した上で開閉がスムーズにできるかといえば中々難しいと思うので、ドアに関する部分は、元々ある折戸や襖は外すか、開いた状態でドアに相当するパーツを作る方が手っ取り早いかもしれません。

上で紹介した突っ張り棒的な柱で作った壁を使用する際に、それに蝶番を付けてドアを吊るのは強度的にかなり無謀です。

なので防音性能的にはあまり好ましくないですが、方法としては

  1. 入り口となる面になるべく厚く重いカーテンを吊る
  2. 衝立のように自立する壁面パネルを作る

という2つがあります。恐らくほとんどの場合1の防音性の高いカーテンや重い布団みたいなものを吊るというのが手っ取り早くて良いと思います。

防音性を謳っているカーテンなども沢山販売されていますが、ここでもやはり重要なのは重さなので、値段と重量で見て、バランスの良い製品を選ぶのが吉です。

まとめ:重要なポイントだけ押さえればOK

長々と解説してみましたが、この記事で伝えたいのは、防音したい壁や天井に、直接遮音・吸音できるものを貼り付けても、ほとんど防音できないよということです。

空気を含めた色々な素材(できるだけ重たいもの)でできた層を作ることで音を減衰させなければ防音は上手くできません。

今回解説した押し入れやクローゼットという狭い空間だと、層を作ろうとすると内寸が狭くなるので、それを嫌って薄い遮音シートや吸音材だけで済ませようと思っちゃう人が多いようですが、まさに付け焼き刃にしかならないので、やるなら狭くはなりますがきっちり層を作りましょう。

ちなみにこの考え方は部屋が広くなっても同じです。広い部屋の一角を防音加工しようとするような場合でも、四方と天井、できれば床もきっちりと木材で枠を作り、その中に吸音材を詰めたパネルを作り、それで層を作ったスペースを作るのが基本です。

ということで色々と防音について解説してみましたが、ここで書いたこと以外でも「隙間を作らない」とか「共振させない」とか色々重要なことは色々あるのですが、初めて防音を意識して、そこからDIYする場合にとりあえず意識したほうがいいことを書いてみました。