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ストロー・チューブ発声のボイストレーニング的な効能と活用方法

ボイストレーニングTips
Image by Alexa from Pixabay

こちらのページで随時募集している質問へのより詳しい回答記事になります。質問内容とざっくりとした回答は以下の通りです。

  • 木田先生こんばんは
    いつもブログを読ませていただいてます。

    近年のボイトレ業界では
    ストロー発声、チューブ発声法が流行しているように思われます。
    ストロー発声法は音声言語医学の現場でも用いられる、非常に安全かつ効果の高いボイストレーニングとして定評があり、個人的にも裏声のトレーニングの一貫として取り入れ、かなりの効果を感じています。

    木田先生はストロー発声法をどう捉えているのか、考えをお聞かせ願いたいです。

    また、ストロー発声法を効果的に活用する練習法も聞いてみたいです。

    長文失礼しました。
  • 近年流行ってるんですか?ストローやチューブを用いた発声訓練はめちゃくちゃ昔からある方法なので最近になってまた流行りだしたんでしょうか。

    おっしゃる通り医学の現場でも利用されますが、それはあくまで発声に何らかの障害や不調があり、それを改善するために用いられます。

    私個人の感覚としてはこういった何らかの道具を使用する方法は、ボイストレーニングとしてはあまり利用しません。大抵は普通に歌う場合とあまりにも乖離があることが多いからです。

    ここで書くとかなり長文になるので、また今度記事にします。それまで詳しい回答はお待ち下さい。

今回はストローやチューブを用いた発声法の効能と、ボイストレーニングへの活用方法、私個人が考える実際にはあまり利用しない理由について解説してみようと思います。

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ストローやチューブを用いた発声とは?

そもそもは音声障害の治療目的で使用されてきたブローイング訓練というのが元になっています。ブローイング訓練というのはコップ等に水を入れ、そこにストローを差し息を吹くことにより、ぶくぶく泡立てるというものです。

このブローイング訓練を、呼気だけでなく発声しながらコップの水をぶくぶく泡立ててやるのがストロー発声やチューブ発声と呼ばれるものです。

このストロー・チューブ発声法の効果としては

  1. 鼻咽腔閉鎖不全の改善
  2. 声帯の過度な緊張を緩める

といったものが挙げられます。

では次にこれらの効能を詳しく解説していきます。

ストロー・チューブ発声の効能

鼻咽腔閉鎖不全の改善

「鼻咽腔閉鎖不全」というなんだか難しい漢字が並んでいますが、単純にわかりやすく解説すると、基本的に発声時には口へ空気が送られますが、それが鼻へ漏れてしまい、不明瞭な発音になったり、呼気を過剰に消費する発声の状態ということです。

これをストロー・チューブ発声を行うことで、呼気でコップの中の水をしっかり吹くことにより、空気を口から外に排出できるようにして、改善していきます。

この鼻咽腔閉鎖不全が音声障害とまではいかないけれど、癖や傾向として持っている場合は、ストロー・チューブ発声をすることで、少しずつ改善していくことはあります。

声帯の過度な緊張を緩める

恐らくこちらの効能がボイストレーニング業界で、ストロー・チューブ発声が流行している、よく利用されている要因だと思います。

特に発声時に喉頭全体が引き上がり、過緊張気味になっている場合に、このストロー・チューブ発声は効果的だとされています。

この効能は、通常発声時には起こらない呼気の逆流が、声帯を振動させやすくすることにより、余計な緊張を作らずに発声できるようになるというものです。

ストロー・チューブを吹いて空気を押し出している状態と、水から泡となり弾け出る瞬間とで圧力差が生まれ、これが普通に発声しているときには起こらない呼気の逆流になるということです。

超簡単にまとめると「普通に発声するよりも呼気のサポートが生まれて発声しやすくなるよ~」ということになります。

ボイストレーニングとストロー・チューブ発声

ではここから、最初に紹介した質問への回答として書いた、ストロー・チューブを使用した発声を使わない理由について解説していこうと思います。

そもそもストローやチューブを使わなくても同じような効能は得られる

上記のように、ストロー・チューブを利用することでの主な効能としては、呼気の逆流がメインです。

ただこれってリップバブルやタングトリルと呼ばれる方法(唇をブルブルさせたり、舌先を素早く振動させる巻き舌)でも同じような呼気の逆流というのは作れるんです。

つまりわざわざコップを用意して、それに水を入れて、吹くためのストロー・チューブを用意して~ってやらなくても、リップバブル・タングトリルをすれば、なんの道具もなくほぼ同じような効果が得られます。

リップバブル・タングトリルが上手くできないという場合は、ストロー・チューブ発声を利用しても良いかもしれません。

しかし、リップバブル・タングトリルが上手くできないというバランス自体が、そもそも発声的にはよろしくない状態(舌や顎、顔面の筋肉の過緊張等)にあることが多いため、だったらリップバブル・タングトリルができるようになりましょうということになるため、ストロー・チューブ発声が必要になる場面があまりありません。

通常発声時とあまりに違う状態

個人的にはこの理由の方があまりストロー・チューブ発声を利用しない大きな要因なのですが、ストロー・チューブを使い水でブクブクさせながら発声している状態と、普通に発声している状態とであまりに違いすぎるということです。

ストロー・チューブの太さや長さ、コップに入れる水の量にも大きく影響されますが、呼気の逆流が声帯振動のサポートになりすぎても、その後それを外した状態での発声と乖離しすぎて、通常発声時にそのサポートの感覚を上手く馴染ませていくことができません。

しかもストロー・チューブ発声をした後に、すぐさま通常発声をした場合には、何らか発声しやすい感覚だったり、いつもより効率的に発声できるかもしれませんが、それも一瞬です。

つまりストロー・チューブ発声を上手く発声訓練に組み込むには、ストロー・チューブ使う、その後すぐに通常発声に戻る、またストロー・チューブ使う、またすぐ通常発声に戻る・・・ということを繰り返す必要があります。

そんな面倒なことを繰り返すくらいであれば、リップバブル・タングトリルを利用する中で、そこから唇や舌の振動を止め、通常発声に移行する方が圧倒的にスムーズです。

どうしても大きなサポートが必要な際には利用価値が大きい

喋り声があまり大きな声にならないとか、地声でも裏声でも声の持続時間が著しく短いという場合には、数分間ストロー・チューブ発声をしてから、通常のボイストレーニングに移行するというような利用方法はありです。

また最初の効能の所でも書きましたが、どんな発声をしようとしても、喉頭が上がり常に緊張してしまうような状態の場合も、しばらくストロー・チューブ発声をした後に、その感覚や楽さを思い出しながらボイストレーニングをやってみるというのも効果的でしょう。

ただそこまで重大な症状でない場合や、方向性的に声帯を緊張させないといけないという場合は、このストロー・チューブ発声をしても意味がない、もしくは逆効果になる可能性もありますので、そこはしっかり見極める必要があります。

まとめ:大抵の場合はリップバブル・タングトリルでOK

よっぽど喉の機能が低下していて、大きなサポートがないと上手く声帯を振動させられないという場合には効果的だと思いますが、ボイストレーニング的には、このストロー・チューブを利用するくらいの練習強度であれば、リップバブル・タングトリルで代用可能です。

練習のバリエーションを増やす目的や、マンネリ解消、もしくはどうしても難しい発声の取っ掛かりを見つけるなど利用方法はありそうです。

しかしどこまでいっても、発声のサポート、つまり練習の強度を下げるものです。また何でもかんでもストロー・チューブを利用してやっていると声帯が弛緩気味になるので、その点は注意しながら上手に利用しましょう。