今回のテーマはボイストレーニング限ったことではないと思うのですが、私の考える「声の理想と現実」についての考えを記しておこうと思います。
クライアントさんとお話する機会があるとよく私がお伝えしていることなのですが、歌う/発声するという上では理想はいつまで経ってもどこまで行っても理想であり続けると思うということです。
ちょっと文字だけでお伝えするのが難しいと思ったので、簡単な図を用意してみました。
多くの人がイメージしている成長・レベルアップ
イメージ1 理想と現実のギャップ
例えばこんな状況をイメージしてみてください、理想とする声や歌があるとして、現状はそれに全然到達できてないという感じです。
別に声や歌に限らず、何らかのスキルを習得しそれをレベルアップさせたいと考えている人も同じでしょう。
で、この状態からどういう風に成長していくと考えるでしょうか?
多くの人は次のイメージのような感じで理想に近づいていくと思っているでしょう。
イメージ2 よくある成長のイメージ
そりゃそうですよね、一歩一歩階段を登っていき、理想との距離が近づいていく。そんな感じで成長していくと考えるでしょう。
しかし!私はそう考えてもないし、そんな風に感じていません。
今までさんざん声と向き合って、馬鹿みたいに時間を費やして辿ってきた成長の道は次のようなイメージでした。
イメージ3 実際の成長イメージ
・・・( ; ◉◞౪◟◉)?
「うん?」って思いますよね笑。
そうなんです、実際に成長していくと共に、理想も同じように高くなっているんですね。現実の自分が立っている位置も確かに高くなってるんですが、理想との距離もそのまま上昇しちゃってる感じです。
つまりいつまで経っても現実が理想にたどり着くことはない・・・ということだと私は考えています。
それじゃ結局は成長してるって言えないんじゃないか!?それは努力が足りないからだ!とかまぁ色々思う方もいるでしょうが、どうしてこんな風になるか解説していきます。
成長すると「足りない」が「より見えてくる」
そうすると理想の位置も同時に上がる
いつまで経っても、聞けば聞くほどすげぇなって声ありますよね、その凄さに気づけるのも成長しているからだと言えます。今まで気づかなかった凄さが成長すればするほど見えてくるのであれば、理想との距離は常に一定以上あるように感じるでしょう。
私自身の経験としては、ボイストレーニングを初めて10年以上経過しますが、当たり前に始めた頃よりも圧倒的に喉は自由になり、出せる音域も3オクターブ以上広がり、過去には考えられないような声が出せるようにはなっています。
しかし理想とする声との間には今でも一定の距離があるように常に感じています。
「確かに昔と比べればこういう声は出るようになったけど、ここはまだまだよなぁ・・・」っていうのがいくつもポンポン出てきます笑
理想はどこまでいっても理想でしかない
「自分自身」の到達点ではない
という風に私は考えています。理想って多くの場合自分以外のもの、声だったり姿だったりをイメージしていると思うんですが、そうなるとそれと完全に同一になれることは永遠にありえないです。
例えばAさんがアーティストBさんの声を理想として、Bさんみたいな声を出したい!と思い練習を続けてたとしても、その理想に追いつくことはないでしょう、だってAさんとアーティストBさんは違う存在だから、全く同じになることはありえないわけです。
しかし能力的な部分でいえば、AさんはアーティストBさんの声を超える能力になる可能性は十分にあります。Bさんには出せない声や音域をAさんはいくつも出せるようになるという可能性は全然ありえるわけです。
しかしそんな状態になったとしても、AさんはBさんようになれた!とは感じないはずです。
そんな状態になってもAさんは、その時出来ないor足りない部分が見えてきて「ここが出来てないからBさんみたいにならないんだ・・・」って考えるでしょう笑
それになれるか?よりも重要なこと
過去よりなにか1つでもできることが増えたかどうか
理想を抱く事自体は全然悪いことじゃありません、私自身も叶わぬ理想を抱いて日々練習しています笑
しかしそれを求め過ぎて疲弊してしまうのは元も子もないというか無駄だと考えています。だってどうしようもないことに悩んだり苦しんだりしても意味ないですから。
あの声が好き!あんな声になりたい!と考えて、それがモチベーションになって、練習を続けられるのであればそれはそれで良いのですが、そこに固執しすぎるのは疲れるだろうし、意識を割くのも勿体無いです。
「出来ることは増えたけど、理想にはまだ手が届かない」じゃなくて「出来ることが増えた」で十二分に良いわけです、無問題。
まとめ:日々少しづつでも成長出来てりゃそれでOK
ああなりたいこうなりたいというのはそこそこに、自分自身の変化と成長を楽しみましょう。
理想はモチベーションを保つために持っておき、それになれるかどうかは置いておく。そうすれば苦しまずに、継続して、楽しみながらレベルアップしていけると思うわけです。