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ボイストレーニングのスタート地点【悪癖だとしてもあるだけマシ】

ボイストレーニングTips

以前に喉というのは個人差がめちゃくちゃ少ない楽器です、上手く思い通りに歌える・話せるというのは喉の使い方の問題でしかなく、その使い方というのはスタート地点の段階で人それぞれ全く違いますよ~というような記事を書きました。

“歌の才能”と勘違いされ続けてきた“声のスタートライン”
歌や発声というのは、普通に声を発して喋れる程度の能力があれば、誰でもプロ並にも上手くなることも出来ま...

この↑記事ではそもそも声を出す、話すという段階からスタート地点が違うという内容ですが、これってボイストレーニングのスタート地点でも同じことがいえるよな~と最近あるクライアントさんとのレッスン後の雑談中に感じたことがあったので、その時話した内容をそのままシェアしてみようと思います。

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クライアント:Sさん シンガーソングライター

ボイストレーニング経験:皆無

このSさんは、それまでアマチュアのシンガーソングライターとして活動されていましたが、2年半ほど前から私のレッスンを受け始め、現在は音楽事務所に所属し活動されています。

そんなSさん、レッスンの受け初めの頃は

  • 裏声が全く出ない
  • 換声点以上の音域は息が漏れる音しか出ない
  • ただ地声をG4まで持ち上げられる

というある意味本物のベルティングボイス/ベルターでした笑

発声できる最高音はG4ということになりますが、その音は物凄い強さと太さでした。ただ持続時間は最長でも3秒くらいだし、動き(揺らしたりビブラートかけたり)は全っっ然できませんでした。

そんな裏声が全く無く、曲を作る際にF4やG4といったギリギリ歌える音域で抑えなければいけない不自由さと、それでは表現できない部分が出てきたということでボイストレーニングのレッスンを始めました。

2年半で爆伸び

そんな全く裏声が出なかったSさんですが、ほぼ確実に週一でのレッスンを受けていただき、一年半ほど経過した頃には、裏声が徐々にスムーズに出始め、そこからはあっという間に様々な音色・音高で声が出せるようになっていきました。

お教えしていた私自身ちょっと驚きでした、まぁほぼ全てを音楽に捧げてるタイプのやばい人なので、この2年半の間、練習時間もほぼ毎日2~4時間くらい取っていたとのことで、短期間で急成長するのも不思議ではないんですが・・・

それにしても、現在ボイストレーニングをしている人にはなんとも羨ましいと思う話しだと思うのですが、ここで勘違いしてはいけないと釘を刺しておきますが笑、このSさんの例はかなり異例です。

普通は全くボイストレーニングの経験がない人が、2年程度ではそこまで急成長しないでしょう。

ではなぜSさんみたいな人がいるのか、前置きが長くなりましたが、これがこの記事で解説したいボイストレーニングを始めた時点でのスタート地点の違いだと思うわけです。

悪癖と呼ばれる状態であれ、それを作り上げた筋力と経験の有無

今回の例では強力な地声とその上での練習時間

Sさんの場合、喉の状態としては完全な地声を張り上げて発声していたので、地声は強力に働かせられますが、発声の状態的には決して健康的ではありませんでした。

しかしそんな状態でさえ、そこまでになるために時間をかけ極端なバランスではあるけども強化できたという筋力(地声の)と経験が、ボイストレーニングを始める前からあったわけです。

そしてレッスンを受け始めてからも、この毎日2時間以上の練習はかかさずこなしていたとのことなので、そりゃそれだけ真剣にやってもらえりゃ効果でるだろうな・・・とも思います笑

こういった要因がボイストレーニングを始めて、比較的短い期間で効果が現れる人とそうでない人との大きな違いだと思います。

図1:悪癖と呼ばれがちな声の状態

すげー尖ってますね、今回例に挙げているSさんはこういう状態だったと簡単にイメージ化してみました。

確かに自在性の幅は狭く、換声点以上の音域でも地声の筋をがっちり働かせて出しちゃってますし、何より裏声が全然育ってませんね~笑

ただこの状態を見て、普通に考えれば・・・というかボイストレーニング的ではない思考で考えると

  • 地声は換声点以上まで張り上げてしまう
  • 裏声は全然出せない

となってしまうんですが、ボイストレーニング的に考えるのであれば

  • 地声は換声点以上まで張り上げられる筋力がある
  • 裏声は出せないが、そのおかげで余計な混合はない

とも捉えられるわけです、というか私はSさんのレッスンを初めてさせていただいた時、完全にこう思いました、続けてくれりゃあ上達させるのは楽な状態だと笑

悪癖すら全くない0の状態

私自身はこっちの状態からのスタートでした

さて世間的には悪癖と呼ばれるような状態だけども、それすらも自在性の一部と捉えると、全く悪いものではないということをご理解いただけたかと思います。

今度は私自身もそうだったのですが、癖すらないまっさらな状態とはどういうものか、イメージとしてはこんな感じです。

図2:癖もなにもない状態

パッと見てそこまで悪い状態ではなさそうですよね。また何となくのイメージとして、強固な癖がある状態よりも、こういう何の癖もない状態(強みもないけど笑)の方がトレーニングのファーストステップとしては良さそうな感じしますよね?

ただ多くの場合、ここから両方のひし形を広げていくのは結構時間がかかります。

なぜなら頼るものがないからです。力を入れようにも力めないし、逆に力を抜こうにもそもそも力が入ってないみたいな、そんなイメージです。

なので現状自在性の高い部分から、本当に少しずーつ音高と自在性を広げていくしかありません、そういう状態での変化というのは中々牛歩です。

成長させやすい声の状態

癖であろうが強みは残す

図1と2の声の状態を重ねてみて、お互いにどこが強みなのか、そしてどこが弱く鍛えていく必要があるのかを比較してみましょう。

図3:状態の比較

  • 図1の状態から鍛える必要がある部分:1と2
  • 図2の状態から鍛える必要がある部分:3

こう見ると鍛える必要がある部分が図1の方が多いので、やっぱり癖が無いほうが良いんじゃーんと思いがちですが、私の経験上、鍛えるのが結構難しいのが3なんです。

というか2なんてのは、色んな音色の地声を出そうとするだけでも、そこそこ広がっていくものです、今まで理想とする音色だけを追い求めて声出していたから気づかなかっただけで、そもそも日常生活の中だったりで、歌う時以上に豊富な音色を使ってるなんてことはよくあります。

なのでそれを意識的にトレーニングとして出せば、数ヶ月や半年くらいである程度広がっていきます。

換声点以上の音域の地声は裏声を内包している

そして図1くらい換声点以上の音高まで地声を張り上げられる人というのは、そもそもその中で裏声の筋肉もかなり強力に動いていたりするんです。

ただそれは地声の筋肉がもう120%くらい活動してくれないと、同時に動いてくれない裏声の筋肉という感じです、だからそのままだと一定以上の音高からは地声の筋肉が一気に弛緩してしまうため、裏声の筋肉も一緒にダラーンとなり、スカスカな息だけになっちゃうわけです。

なので地声で換声点付近を出している状態から、上手い具合に導いてやれば図2くらいの裏声の音域と自在性はパパっと取り出せたりします。

つまり1の裏声の音域や自在性は、図1のような状態の場合、きっちりボイストレーニングをしてやれば2の部分同様、半年くらいでグッと広がります。

そうなると図2の状態から3の部分を伸ばすのが一番難しいということになります。

上でも書きましたが、支えてくれるものがない、目印となるものがない状態なので、結構手探りな開発になることが多いんです。

地声にしろ裏声にしろ、その必要最低限の筋肉の動きで今まで声を出してきたわけで、そこから音域を広げるにしろ音色を増やすにしろそもそも「どうやって出すの?」となっちゃう人が大半です。

これにはメンタル的なブロックがある可能性も高いので、そこを崩していく必要があることも多いため、半年やちょっとでは大きく変化が起きないこともざらにあります。

換声点以下の地声で張り上げている場合

この場合ほぼ裏声系の筋肉が動いていない状態である可能性もありえてくるので、場合によってはやばい感じの固着状態になっている可能性があります。

C4とかD4までしか地声で張り上げて出せないという場合は、裏声の動きが悪くなっている可能性が高いので、そういう場合は図2のような状態の方が圧倒的に訓練していきやすいといえます。

こういう完全に片方の声区の特性しか持っていない状態で、その声区の限られた音域しか出せないという場合に限り、悪癖と呼べるのかもしれません。

まとめ:経験年数はあてにならない

長々と書いてきましたが、つまり何が言いたいのかというと

全くまっさらな状態から始めたボイストレーニングと、悪癖と呼ばれようが土台がある状態から始めたボイストレーニングでは全く意味が違う

ということです、そしてこれはボイストレーニングの情報を見聞きするときにも重要になってきます。

どんな状態であれ、ボイストレーニングを始めよう!としたとき、そもそも土台があった人の言う、効果があるトレーニングだとか感覚というのと、全くまっさらな、悪い言い方をすれば何もなかった状態の人が、そこから土台を作るために効果的だったと言うトレーニング方法やら感覚というのは結構大きな違いがあります。

下手でも高音が出なくとも、そこをカバーしようとして頑張って歌っていた時に育っていたパーツがある人と、それすらなく、本当に脆弱な状態の声ボイストレーニングを始める人がいるわけです。

ちなみには私は完全に全部が脆弱な状態で始めたタイプです笑

なので、元々どんな状態であれ歌っていたタイプの人をお教えする時に「え!この早さでここまで出せるようになったの!?」と驚くことがよくあります( ◉◞౪◟◉)

逆に元々全部が脆弱なタイプの方の場合「わかる~そうなるよね~でもそこから時間かかるから耐えてね~」と伝えたり思ったり願ったりすることがよくよくあります笑

といった感じですが、まぁ何はともあれ声のことなんか人と比べてもしょうがないので、今自分自身に出来ることを精一杯やっておけばOKです!頑張っていきましょう!

ということで今回はここまでです。

最後にSさん、記事にすること快くご了承していただきありがとうございましたm(_ _)m