こちらのページで随時募集している質問へのより詳しい回答記事になります。質問内容とざっくりとした回答は以下の通りです。
- はじめまして。
息の使い方(?)に関して悩んでいるので質問を送らせていただきます。
自分は30代の女性で、ボイトレのレッスンを受け始めて2年ほどになります。
複数の講師の方に見ていただいている(※そういうシステムのレッスンに通っています)状態なのですが、「息の量が足りていない、声帯の閉鎖が強すぎる」「息が多すぎる、声帯の閉鎖が足りなさすぎる(普段の話し声からしてややハスキーっぽいので声帯を開く癖がついているのでは)」と真逆の指導を受けることが度々あります。
自分では息が多い自覚はなく、喋っている時に「苦しそうに聞こえる」「(歌と関係なく)息が圧倒的に足りてないのでは」と言われることが多いので息の量が足りていない(声帯が締まりすぎている)方が正なのでは、という自認なのですが、息が多すぎるように聞こえてしまう原因などは何かあるのでしょうか。
(声帯周りはカメラで確認して問題ないことを認識しております)
また息が多すぎるように聞こえてしまうことを改善できるのであればその方法も教えていただきたいです。
普段はあまり大きな声を出せる環境にないので、息を長く吐きながら止めたり流したり、ハッハッと短く切るようにしたり、エッジボイスを色んな音程で出すようにしたり等の練習しか出来ていません。
また我ながら不思議なのですが、自宅での練習ではある程度自由にエッジボイスが出せるのにレッスンの時間になると絞り出すようなエッジボイスしか出せなくなってしまいます。
- 『声帯の閉鎖が強すぎる』と『息が多くて閉鎖が弱い』は別に真逆の状態ではなく、どちらの要素・原因が割合して大きいかというだけの話なので、トレーナーがどちらの症状を先に解消しようとしているかによって指導方法が変わってきます。
詳しい回答は次回の更新記事で取り上げようと思います。しばらくお待ち下さい。
今回の質問者さんは複数のボイストレーナーに「息が多い」と「息が少ない」という真逆の指導をされたということですが、この記事では質問者さんへの回答と同時に、息の多い少ないに関わらずボイストレーニングをしていく中で真逆の症状を指摘されるとき、それは『どちらかが間違っているわけではないことが多い』ということについて解説していきます。
息の量に問題があるときに考えられる原因
息の量が多すぎる/少なすぎると診断された場合、喉の中で起こっていることとして考えられるのは
- 肺から供給される呼気量が適切でない
- 呼気を受け止める声帯の調節が適切でない
上記の2つです。もちろんどちらか1つだけに振り切った状態である可能性もあるし、音高や音量などによってはこれらの要因が割合を変えながら同時に起こっているということもありえます。
ボイストレーナーはこれらのどちらに問題があるのか?もしくはどちらが根本的な原因としての割合が多いのか?ということを声を聞きながら予想します。その上で指導・改善方法を考えてレッスンを組み立てていきます。
そして重要なのはどちらの要素も表面的な発声上での問題としては「息の量」で括られるということです。
『息が多い』という症状の原因はどれか?
- 呼気量が多い
- 多すぎる呼気量に対応して声帯を強く閉鎖して発声する
過剰に声帯の閉鎖を強めているように聞こえる - 多すぎる呼気量に耐えられず声帯を開大気味で発声する
過剰に声帯の閉鎖を緩めているように聞こえる
- 多すぎる呼気量に対応して声帯を強く閉鎖して発声する
- 声帯の閉鎖が適切でない(呼気量は適切であっても)
- 声帯の閉鎖が強すぎると声にノイズが混ざったり、体感的に圧迫感がある
息が少なく感じられる - 声帯の閉鎖が弱すぎると声が掠れたり、音量を大きくできない、枯れやすい
息が多すぎるように感じられる
- 声帯の閉鎖が強すぎると声にノイズが混ざったり、体感的に圧迫感がある
例えば『息が多い』という診断をされたとしても、それを引き起こしている原因としては主に上記のようにいくつかのパターンが考えられるということです。
そして前述の通り、これらのパターンは明確にきっぱり分かれているということは少なく『喋り声だとこの傾向』『中音域は~』『高音域になるとこうなる』といった感じで、流動的に変わっていくことがほとんどです。
なので記事冒頭にある回答のように「息が多い」と「息が少ない」という一見すると相反するような指摘も、どの要素を原因として捉えているか、どの要素から改善しようとしているかによっては、全然ありえることだということです。
これらを鑑みて質問文を読んでみると、質問者さんの声を聞いたボイストレーナーは『呼気量』と『声帯の閉鎖具合』で見方が分かれている可能性があります。
「息の量が足りていない、声帯の閉鎖が強すぎる」という指摘はそもそもの呼気量に目をつけていて「息が多すぎる、声帯の閉鎖が足りなさすぎる」という指摘は声帯の閉鎖具合のことを言っているのかもしれません。
『呼気量』と『声帯の閉鎖具合』のどちらか片方だけに大きな問題がある場合、その症状をボイストレーナーが聞いて意見が真っ二つに分かれるということは少し考えにくいからです。
ただ実際にはどのように聞いて指導しようとしているかはわかりかねますので、このブログでは何度も書いていますが習っているボイストレーナーの指導内容がわからない・混乱しているという場合には、少し勿体ないかもしれませんが1回分のレッスンを丸々座学的な授業として疑問・質問を聞いてもらう時間に充ててみてください。
先々のことを考えるならなるべく早急に自分自身の知識や喉の状態と、トレーナーが考える指導方針などはすり合わせておく必要があります。
一見すると相反する指摘をされるのは息の量だけではない
今回の質問では『息の量が多い/少ない』という要素でしたが、ボイストレーニングではこれに限らず一見すると「真逆のこと言ってない?」と思うような指摘でも、原因として考えるポイントや、それを改善するための方法やそれを指導する順番によっては全然ありえることだったりします。
- 喉頭の位置が高くなってしまう
- 喉頭を上げないようにと引き下げる筋肉も強く緊張しているけど結果的には喉頭が引き上がっている
- 喉頭の高さを指摘される可能性と引き上げに抵抗している引き下げを指摘される可能性がある
- 中音域で裏声を維持できず地声に切り替わる
- 裏声の強度・拮抗が弱いから地声に切り替わるが切り替わった地声も中途半端な状態
- 裏声をもっと鍛えましょうと指摘される可能性と地声をもっと鍛えましょうと指摘される可能性がある
上記の1のような場合「喉頭の位置が引き上がってしまい高くなるから引き下げる練習をしよう!」というのが、もっともシンプルな考え方ですが、そこに引き下げる動きが知らず知らずのうちに入ってしまっている場合「まずは喉頭を引き上げるだけの動きができるか練習しましょう」となる可能性も大いにあります。
なにも知識がない場合「喉頭の位置が意図せず引き上がってしまうのに喉頭を引き上げる練習をさせられる・・・このトレーナーは何も知らないんじゃないか・・・?」と思われる可能性がありますが、声を聞いて余計な要素があることに気づき、そこから改善しようとするなら方向性としては間違っていません。
地声と裏声に関しても同じです。
「裏声が中音域から下に降ろせない」となると多くの人は裏声の中音域~低音域の練習で改善しようとしますが、そもそもひっくり返った際の地声の状態があまりバランス的によろしくない場合、まずは地声から固めていきひっくり返りを強調させるという練習の方向も全然ありえます。
質問者さんへの回答
ここまでで解説した内容を頭に入れた上で、質問者さんに回答していきましょう。質問を要約すると下記の3つになると思います。
- 息の量は少ない/声帯の閉鎖が過剰という傾向ではないか
- 上記の状態から発声すると息が多すぎるように聞こえるのか?
- 息が多く聞こえるのを改善するにはどうすればいいのか?
質問者さんの状態を1の通りだと想定してみましょう。
その上で『息の量は少ない/声帯の閉鎖が過剰』という状態だと息が多すぎるように聞こえてしまうのか?ということを考えると一般的にはあまり考えられないと思います。
実際に音声を聴かないことには明確にはわかりませんが『息の量は少ない/声帯の閉鎖が過剰』という状態の声を聞いて、息が多いとか声帯の閉鎖が弱いと思われるのであれば声の中になんらかのノイズっぽい要素が多かったり、そもそも声があまり大きくない/小さいのではないか?と予想されます。
そして上記の予想もあくまで声を聞いたことのない私の勝手な想像なので、質問の要約3つ目の『息が多く聞こえるのを改善する方法』には回答できません。
普段はあまり大きな声を出せる環境にないので、息を長く吐きながら止めたり流したり、ハッハッと短く切るようにしたり、エッジボイスを色んな音程で出すようにしたり等の練習しか出来ていません。
また我ながら不思議なのですが、自宅での練習ではある程度自由にエッジボイスが出せるのにレッスンの時間になると絞り出すようなエッジボイスしか出せなくなってしまいます。
そして普段している練習が前述の『息っぽく聞こえてしまう要素』を増長させている可能性があります。
どれも息を強く吹く傾向の練習だし、エッジボイスは上記の声にノイズ的な音声を増やしてしまうこともよくあります。ただどういった状態であっても、恐らく必要なのは声帯を効率的に振動させる方向性の練習なので声を抑えてする練習のほとんどはあまり効果的ではない可能性が高いです。
まとめ:そもそもの原因はなにか?がポイント
声は様々なパーツや動きが複雑に絡まってできているので、聞く人によっては全く違う部分を問題の原因としてとらえて改善させようと指導することは多々あります。
今回は「別に真逆のこと言われてもどちらかが間違っているというわけではないことも多いよ」という回答でしたが、もちろん耳の良くないボイストレーナーに習うと、見当違いな声の聞き方をされてしまい、全く関係のない部分を良くしようと余計な練習をさせるということもありえます。
質問者さんの場合も、片方、もしくは最悪の場合、両方のボイストレーナーの耳があまり良くなく、本来の問題を引き起こしている原因に言及されていないという可能性も全然あります。
なのでボイストレーナーに習っているのであればそのトレーナーとよく相談して、発声上の問題となっていること、それの原因、そして改善するまでのロードマップをしっかりと話し合ってください。
現在習っているボイストレーナーとのレッスンで不安や悩みがある場合はぜひ体験レッスンにお申し込みください。現状の声の状態や問題点くらいであれば確実にお伝えできます。