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なぜボイストレーニングでは喉頭を下げる指導をされるのか?|訓練と芸術的な意図の混同

ボイストレーニングTips

様々なボイストレーニングメソッドを学んだ経験のあるクライアントさんとのレッスンで興味深い話をしたのでシェアしようと思います。

内容はタイトルの通りなのですが、そのクライアントさん曰く「ほとんどのメソッドでトレーニング初期には喉頭の位置を下げた状態での発声を教えられる」ということです。

「なんとなく目的は予想できるがトレーナーに解説してほしい」と言われたので、私の予想をお話ししました。

実際にボイストレーニングのレッスンを受けたことのある方は心当たりがあるかもしれません。学校の音楽の授業などでも「あくびの喉で歌って」とか「顎をしっかり落として口を開けて」といった指導をされたことがある方も多いでしょう。

直接的に「喉頭を下げて」とは言われなくとも、結果的に喉頭を下げるようにするための指導というのは、ボイストレーニングや歌唱指導の現場ではよく使わているということです。

ではなぜそういった指導がされているのか?ということを完全な私の独断と偏見を交えた予想で簡単に解説してみようよ思います。

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喉頭を下げることによって起こる発声への影響

多くの人が歌う際の悩みとして挙げるのが「高音域の発声」ですが、これは喉や声帯の構造上、音を高くするには喉頭を引き上げて発声するのがもっとも簡単な方法なので、声を高くするとどんどん喉が詰まった状態になり、それと同時に声帯も過度に緊張してしまいある高さから声にならなくなってしまうことが主な原因です。

これが世間的には「喉絞め発声」「喉が詰まった状態での発声」ということになります。

なので多くの場合はこの「喉が締まった状態」に対抗するため逆に喉頭を下げて発声する練習をすることが多いのでしょう。

喉頭を下げるとどのようなメリットがあるのか、めちゃくちゃ簡単にまとめると下記のことが挙げられます。

  1. 声帯を伸ばしやすくなる
  2. 声道・共鳴腔の過度な狭窄を避けられる

1の『声帯を伸ばしやすくなる』に関しては前述の『音を高くするには喉頭を引き上げて発声するのがもっとも簡単な方法』と矛盾するように思うかもしれませんが、実際には様々な筋肉が連動・拮抗しながら声を作っているので、どちらも間違いではありません。

構造的には喉頭は低い位置にあると声帯を伸ばしやすくなり、同時に引き上げる動きに拮抗する形で作用すると声道・共鳴腔を広く保つことができます。

この辺りの細かい筋肉の名前や動きについては、ひとつひとつ解説していくとめちゃくちゃに煩雑になるので、詳しく知りたい場合は、専門書を読んだり、レッスンでボイストレーナーに聞いてみましょう。

  1. ボイストレーニングの最初期には音高を上げると喉頭を引き上げて声帯を過剰に緊張させて発声してしまう場合が非常に多い
  2. 喉頭を下げることで声道・共鳴腔を広く保ち、声帯を引き伸ばしやすくなるため、過度な緊張を伴った高音発声を避けることができる
  3. ボイストレーニングではまずシンプルに喉頭を下げて発声できるように指導されることが多い

ボイストレーニング的には上記のような理由なのですが、ここで時々混同され勘違いされるのが『喉頭を下げた声が正解』といった思考です。

喉頭の位置を上げない/下げた声が正解ではない

前述の通り発声訓練的に効果効能があるため「まずは喉頭を下げて発声してみましょう」となるだけで「喉頭の位置が低い状態の発声が正解です」では全くないです。

こういった喉頭の位置が低い状態の発声、つまり音色的に太く豊かなものが良い・正解というのは、主にクラシック音楽を学んできた人に多い思考です。

クラシック・声楽の世界では発声上のマナーとして喉頭の位置を下げた状態じゃないとルールが守れないからそうしているだけで、それが万人にとって正解というわけではありません。

しかし学校の教員やボイストレーナーの多くがクラシック音楽を学んできた人が多いため、ただひとつのジャンルで正しいとされているマナーであるだけなのにも関わらず、世間一般でも『太く豊かな声』が『良い声』とされがちです。

そういった思考のボイストレーナーが「喉頭の位置を下げて発声しましょう」と指導するのと、喉の構造・筋肉の機能的な意味で「喉頭の位置を下げて発声しましょう」と指導するのとでは、同じ文言でも最終的には全く違った結果を生みます。

一方は『喉頭の位置が下がった状態でしか発声できない』状態になり、もう一方は「実現できる様々な発声の中に喉頭の位置が下がった発声が加わる」状態になるということです。

まとめ:声の幅を狭めないように注意しましょう

ということで「なぜボイストレーニングでは喉頭を下げた発声を教えられるのか?」という疑問に「ほとんどの場合でその方がメリットが多いからです」ということでしたが、注意すべきなのは後半の「喉頭を下げた発声が正しい」という考え方ですね。

このブログでは何度も何度も繰り返しリピートリピートして書いていますが、ボイストレーニングというのはそのほとんどが出せない声をなるべく少なくするための作業です。

狙った発声状態に固定化するといった類のものではありません、そうなってくるとそれはもうボイストレーニングではなくボーカルトレーニングです。

なのであくまで初手として効果的であることが多いからやることが多いだけです。状態によっては喉頭を下げるとそのときにある癖や固着を増長させることもあるので、逆に思いっきり喉頭を引き上げて発声してもらう場合も全然ありえるのがボイストレーニングです。

なんとなく「喉頭は低いほうが良いから下げるように指導されるんだろうな~」と思っていた方は、まっっっったくそういうわけじゃないということだけでも頭に入れておいてもらうと、今後の発声訓練がスムーズに進むと思います。

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