すっかりシリーズ化している『声区融合のヒント』に関する記事です。今回は様々な母音と子音の組み合わせを利用し、ミックスボイスのちょうどいいバランスを探ってみようという内容です。
ここでは様々なボイストレーニングメソッドでよく利用される、スタンダードな発音を使用していますが、発声に関わるパーツや、それまでの喉の使い方によって、どの発音が発声しやすく、どの発音が発声しにくいというのは十人十色です。
なのでここで紹介していない母音と子音の組み合わせでも、貴方には発音しやすく、ミックスボイスを作りやすいものがある可能性が高いので、参考音源を聞いて、なんとなくの方向性がわかったら、好きなように色々な母音と子音を組み合わせを探りながらカスタマイズして練習してみてください。
練習する上でおさえておきたいポイント
この記事で紹介する練習方法をする上でおさえておきたいポイントや注意してほしいポイントは以下の通りです。
- 母音はそれぞれ、なるべく中庸な(明るく鋭すぎる/暗く深すぎるのはNG)音質を狙う
- 喉頭の位置は真ん中付近で安定するように
- なるべく地声から裏声に崩壊することなくスムーズに移行する
- 地声~裏声が上手く移行できない場合は、喉頭の位置を下げ気味(母音を曖昧に/暗く保つ)にしてみる
- どの高さになっても母音と声量をなるべく一定に保つ
です。これらのポイントをおさえておかないと、融合訓練としての価値が著しく下がってしまうため、注意しながら練習しましょう。
1. hの子音を使った発音でミックスボイスを探る
参考音源:『ホ』成功パターン
始めに『h』の子音と『オ』母音で『ホ』という発音で、スケールを歌えるかチャレンジしてみましょう。
この『h』は声帯が裏声的な状態になりやすい子音のため、換声点付近やそれ以上の音高は、コテコテの裏声になりやすいです。
なのでまずはこの発音を使い、地声から裏声にスムーズに移行し、狙った音高を当てられるかということに注目して練習しましょう。
参考音源:『ホ』失敗パターン
この失敗パターンのように、音高が上がるにつれて明らかに母音の質感が変わったり、息漏れした音質にならないように注意しましょう。
この『h』の子音は、意図せず声量が大きくなってしまいやすいため、コントロールできる範疇で声量を抑えるなどの工夫が必要かもしれません。
また音源には収録していませんが、あまりにはっきりした強いミックスボイスを作ろうとすると『h』の子音がなくなり、ほぼ母音だけで発音しているような状態にもなりやすいため、しっかり『ホ』といえているかも注目しましょう。
2. mの子音を使った発音でミックスボイスを探る
参考音源:『マ』成功パターン
次は『m』の子音と『ア』母音で『マ』という発音で発声してみましょう。
『m』の子音は、息の流れを唇を使い一旦受け止めることにより、声帯にかかるプレッシャーを良い感じに抑制してくれる効果があります。
だから発声訓練といえばこの『マ』という発音がよく使われるわけです、中庸でバランスしやすいということです。
なのでできれば上から下まで、できるだけ音質を統一しながら発声できるか?という観点で練習してみてください。
参考音源:『マ』失敗パターン
これも『ホ』の参考音源と同じように、こんな感じで音高によって母音が明らかに変わってしまったり、音質が地声から裏声に一気に変わってしまわないように注意です。
2. gの子音を使った発音でミックスボイスを探る
参考音源:『ガ』成功パターン
最後は『g』の子音と『ア』母音で『ガ』という発音で発声してみましょう。
『g』の子音は、息を止めることにより、声帯にかかるプレッシャーを高めてくれる効果があります。なので発声の強度を高める際によく利用される子音です。
参考音源:『ガ』失敗パターン
上記のように、強度を高めやすいということは、つまり余計な力みも生みやすいということなので、この失敗パターンのように、母音が意図せず変形してしまう、それによって喉頭が引き上がって苦しくなる、声量が意図せず大きくなってしまう、などのことが起こるようでしたら、まだこの『g』の子音を扱うのは早いということです。
2つ目の『m』の子音を使い、母音を色々変えてみて、上手く繋がった感覚が得やすい発音を探って、まずはそれを安定させましょう。
まとめ:ここまで色々書いてきましたが重要なのは・・・
基礎的な発声訓練です。
この記事で書いた母音と子音の組み合わせによって、確かにミックスボイスを作りやすくなったり、そのバランスを探りやすいというのは確かなのですが、それをするにしても安定した発声の足場・土台が必要不可欠です。
なのでこの記事に書いてあることや、それらをもっと専門的かつ深くしたものであっても、それだけをやっているということになれば、発声の根本的な改善にはなりません。
ここにあるような練習が上手くできないのであれば、まだまだ基礎的な発声訓練、つまりは地声と裏声を分けた上で徹底的に鍛え、足場・土台を強くするということが足りていないということなので、焦らずもっとシンプルな練習から始めてみてください。
細かい解説は抜きにして、とりあえず参考として挙げられている音源を真似してみてくださいという企画です。
ボイストレーニングで重要な『様々な声の素材集め』に便利なシリーズです。