数日前にこんなこと↓をX(旧Twitter)で書いたのですが、この内容を解説する記事になります。
『声区融合』の前に『上手く声区を移行できる』という状態が必ず必要です。
この『上手く』というのは地声~裏声を行き来しても音高や狙った音色からブレないということです。
— 木田圭一 (@KidaKeiichi) December 3, 2023
今回解説する内容が頭にないと、分離も上手くできてる、強化もそこそこ進んできた、次は融合だ!ってなったけど、中々上手くできない、というか融合訓練になると、これまで上手くできていたことすら上手くできなくなるということが起こってきます。
これはそもそも鍛えられた地声と裏声を連続的に鳴らすということを分離・強化の段階ではあまりやっていないため、いきなり協働させようにも上手くできないということです。
なのでまずは地声と裏声を連続的に、一息の中で行き来し、それでも安定してブレない状態を作る必要があります。
1. まずは地声/裏声を分けた状態で安定して発声できるか
前段階として、地声と裏声を分けて当たり前に安定した状態で発声できるかを試してみましょう。
しっかりフルパワーの地声と裏声を発声し、狙った音高にバチッと当てられるか注意してやってみてください。
手加減した発声じゃないとスムーズに切り替えられないとか、音高が安定しないという場合は、今回の記事で紹介する練習をしても意味がないし、下手すると余計な固着を生む可能性があるため、まずはこれが当たり前に、楽々できる状態かをしっかり確認しましょう。
2. 地声と裏声を一息で行き来する
この練習をする際にクリアしなければいけない条件は以下の通りです。
- 両声区をフルパワーで(しっかり)発声する
- レガートでグラデーションしながら行き来できる
- 換声点を上手く繋ぐ必要はないが、切り替わりで音高や音色がブレない
これらがクリア出来ない場合、まだまだ地声・裏声共に鍛えられる余地があるし、融合するには弱いということです。なので融合するのに躍起にならず、丁寧に分離・強化を進めて、その中で少しずつ融合系の訓練を取り入れていきましょう。
3. 素早く地声と裏声を行き来する
2の連続で素早くやってみましょう。こういう練習をしようとすると、いきなり音高がブレブレになったり、音色が徐々に変わってしまったりということがよく起きます。
この練習もクリアしなければ条件は2と同じです。ただこの練習ではレガートで行き来する余地はないですから、両声区がしっかり出せているか?という部分と、切り替わりで音高・音色が変わらないかだけを注意しましょう。
以前に解説した強調対比に練習としては似ているので、上手く出来ない場合はそちらも参考にしてみてください。
まとめ:繋げる前に行き来する
いきなり強固な橋を作ろうとするのではなく、まずは道をならして、溝をぴょんぴょん行き来しましょう。
今回は主な目的である声区の移行をシンプルにやってみるための方法をご紹介しましたが、これ以外にも複雑なスケールを上手く融合させることを目的とせず、とりあえず地声と裏声を一息で使い、その中でそれぞれをきっちりお仕事させる練習の段階もあります。
ボイストレーニングがそこそこ進んできて、じゃあそろそろ融合しようとして、いきなりメッサ・ディ・ボーチェをやろうとしている方、とりあえずこれくらい簡単な動きから融合の足がかりを作ってみてください。