未だに初めてレッスンを受講して頂いて、それまでのボイストレーニングの経験を聞くと
- 声に張りがないからダメ
- 換声点以降張り上げているからダメ
- お腹に力が入っているからダメ
- 顎に力が入っているからダメ
みたいなことで、色々と矯正させられた挙げ句、今まで出せてた声が出なくなったり、最悪の場合明らかな声の不調を抱えてしまうというようなことがまだまだよくあるようです。
世間一般でよく耳にする発声時の良くない癖・傾向・状態というのはいくつかありますが、それがどういうものであれ、すぐにそれを止める方向でトレーニングを進めていく必要があるのか?ということについて書いていきます。
初めに私の思う答えを書くのであれば
と考えています。
良くないとされているものが現状の声の支えになっている可能性が高い
支えがなくなると何をどうしていいか迷子になる
以前あった質問箱への回答ですが、まぁこれに近いことがこの記事でも言いたいわけです。
上記の質問の場合、顎の力みを力強い発声の足がかりにしてるという状態かもしれないわけで、そんなときにその足がかりすらも「力んでる・・・止めなきゃ!」としちゃうと非常に勿体無いです。
人間の脳の習性
『やっちゃダメ』を理解できない
以前にもブログかTwitterに書いたかもしれませんが、人間の脳というのは否定形を認識できません。
つまり超簡単にいえば「○○しちゃダメ!」と思えば思うほど「○○」をやっちゃうということです、心当たりある人も多いんじゃないでしょうか?笑
まともなボイストレーナーのレッスンであれば、この脳の習性を利用してトレーニングを組んでいきます、私も僭越ながら多少ではあるもののまともなボイストレーナーなので笑 レッスン中に「〇〇しないように」という言葉の後に必ず「〇〇してください」とやってほしいことをお伝えします。
こうしないと「○○しちゃダメ」だけだと脳は「〇〇しちゃえ」になります、なので「■■しよう」で上書きしないといけません。
上書きしようとしても意識が「ダメ」だとダメ
違う動きを新たに開発する必要がある
上の質問でもリラックスを意識するのは有効か?と書かれているので、これで良いんじゃないか?と思うかもしれませんが、このリラックスに至る思考回路の最初が
- 顎の下が力んでしまう
- 力むのは良くない
- じゃあリラックス
となっている場合、やっぱり脳は最初の意識である力むのは良くないをやろうとしてしまいます。
ボイストレーニングのレッスンでは、こちらのデモンストレーションを山程お聞かせし、それをコピーする、つまり今までの状態が良くないからやらないようにするという意識ではなく、コピーする・新たな操作で上書きするという方向にだけ意識が行くように誘導します。
ということで人間が持ちうる何らかのスキルを向上させようとしたとき、そのトレーニング方法として「良くない状態だからそうならないように操作する」というのは非常に非効率的だということです。
現状良くない状態・悪い癖を持ちながら新たに出来ることを増やす
じゃないと声の開発・成長が非常に遅れます
長くなってきたのでまとめていきますが、前から散々言ってますように、悪いとされてるからやめよう!そしてやめるための練習をしよう!じゃなくて、それを持ちながら、そこから新たに出来ることはないかという意識で練習してください。
上の方で書いた悪い癖を足がかりにするというのがまさにそれです、その癖があるからこそできる新たな状態をいうのを探るわけですね。
悪い癖を全部抜いて発声しようとすると、以前にも書いた「脱力至上主義」っぽい、声に全くテンションがかけられない発声にするしかなくなります。
最初に書いた非常に限定された状態というのは、発声していて明らかに痛みを感じたり、すぐさま声が枯れ・掠れていくような状態です、こうなるとそれを持ちながらの練習ということ自体が非常にリスキーなので、できるだけ今ある状態を手放す必要があります。
それ以外はいいです、ダメなんだろうと思いながら、それ以外に色々と声を探っていけば。
まとめ:「○○しないように!」「○○しちゃダメ!」というような指導を受けている方は要注意
『教える』ということ自体を勉強していない可能性が大です。
それまで受けていた指導が「ダメとは言われるけどその解決方法を教えてくれない」というのがうちへ来られた理由としてよくあるんですが、こういうのも今回書いたようなことを知らないで「やっちゃダメなことしてる!」から「○○しちゃダメ!」とそれを伝えるだけという指導ともいえない指導をしている人間が多いということですね。
またこれよりちょっと進んだ指導者の場合「それじゃダメだよ!こうだよ!」と生徒に聞かせるデモンストレーションが、明らかに真似するのが無理な、生徒の状態から何段飛ばしてんだって声なのがあるあるでしょう笑
つまり生徒さんの良くない癖を持ちながら、現状手の届くであろう範囲、そこからの発声の仕方・道順を教えられないということです。
そうなると本文中にも書いたように成長・変化にめちゃくちゃ時間がかかります、感の良い方やそもそも喉がある程度開発されてる方であればまぁ上手くいくかもしれませんが・・・
ということで悪い癖を止めなきゃ!じゃなくて、新たに違う方向性の声を探るという感じで練習していった方が良いよ~ということでございました。