以前は弱くてもいいからヘッドボイスを出しましょうというテーマで記事を書いていたのですが、最近はまぁそれよりも最初にやることあるよね?って事で今回は声区融合のステップとしてすごく重要な「声区の分離」それに必要なファルセット/息漏れのある裏声/純粋な裏声についての記事です。
これが出来ていないと本当に全く先に進めないので、是非「え?弱々しい裏声ならすでに出せるよ?」と言わずに読んでちょっと認識を改めてください。
また実際に意識して出そうとするとかなり難しかったりしますよ、やったことのない方は是非お試しください。
まずはファルセット(息漏れのある・純粋な・支えのある裏声)について
こちら↑の記事を先に読んでおいてください、ファルセットと裏声(ヘッドボイス)の違いについて書かれてあります。
このファルセットがほぼ輪状甲状筋(CT/前筋)オンリーの発声というのが理解出来たでしょうか?そしてこのファルセットですが↑の見出し通りいろいろとメソッドや声の状態によって呼ばれ方が微妙に違います。きちんと声区を分離させてから訓練を始めるYUBAメソッドとフースラーメソッドとを比べてみて少し整理してみましょう。
各メソッドの説明は↓の記事を参照してください。
各ファルセットの特徴
“純粋な裏声”としてのファルセット
フースラーの発声メソッドでは声区を分離するときに重要な声がこの重要な裏声だとされています。どのメソッドでもそうですがこの声が出ていないとその声は混合状態にあり、いつまで経っても不自由な状態にあるとされます。
このフースラーのメソッドでの純粋な裏声というのは音域でいえば男女ともにB4辺りまでに限られその間で発声します。
それ以上の高さになると輪状甲状筋以外の筋肉が動き出すためだといわれています。なのでわりと裏声としては低い音域で本当に輪状甲状筋しか働いていない状態を作り出す事が出来るようになります。
“息漏れのある裏声”としてのファルセット
YUBAメソッドで使われるファルセットはこの息漏れのある裏声と呼ばれるものです。こちらはかなり高い音域まで発声します。
本に付いているCDによっては男性でG5などのめちゃくちゃ高いところまでファルセットで出すというメニューもあったります。
これはYUBAメソッドがそもそも輪状甲状筋をあまり使っていない人を想定してのトレーニングだからだと勝手に予想しています。
勢い良く地声では絶対に届かない音域を狙って「ホ」という発音で出そうとすれば、体が勝手に息を大量に使ってスムーズにファルセットの状態、つまり輪状甲状筋を強力に収縮させた状態を作り動かせるからだと思います。
“支えのある裏声”としてのファルセット
これもフースラーメソッドでいわれる裏声の種類です。こちらはある程度輪状甲状筋が強力に動いている状態の声とされています。
つまり息漏れのある裏声を発声している時のようなテンションで声帯が鳴っている状態でしょうか。
YUBAメソッドには息漏れの無い裏声というピュアなヘッドボイスとして定義されている裏声があり、その声は輪状甲状筋に加えある程度地声系の筋肉が動いている状態とされていますが、この支えのある裏声はそれよりも輪状甲状筋が優勢なほぼ地声系の筋肉は関わっていない裏声といった感じでしょうか。
この辺りはいろいろメソッド間で違いがあるので一概には言えませんがこんな感じです。
全てに共通している事
つまりは簡単にまとめると・・・
- 輪状甲状筋オンリーの発声
- B3~B4付近での発声の方が裏声としての純粋性は高い
- 息漏れが激しくロングトーンが不可
- 反射的な動きで出すのであれば高音域を狙うのも有効
- 母音は「オ」か「ウ」それ以外は裏声の純粋性が保てない
ということですね。
これらがファルセット=ほぼ輪状甲状筋オンリーの発声の特徴ということです。
そしてこの声が出せない状態なのであれば現状声は混合状態になっている、つまり融合しようとしている声がそもそも不純物が入り込んでしまっている状態といえます。
なぜ声区融合のステップとしてファルセットが重要なのか?
融合する前の段階で純粋なものにしておきたいから
つまり真っ白の絵の具と真っ黒な絵の具がきっちり分けられていれば、好きな濃さのグレーが作れるのであって、始めから若干色が混じってしまった絵の具では狙った色が作れません。
この好きな色合いのグレーを自在に作れるようになるのが声区融合なので、訓練を始める時にはきちんとまっさらな状態の地声と裏声を用意しておく必要があります。
これが出来ていない状態での融合の訓練は危険
黒ずんだ白色の絵の具と最初からグレーっぽい黒色の絵の具で狙った色を作ろうと思ってもそりゃ上手く行きません。
声が混合している状態はそもそも自分の声がどんな状態なのかわかりませんから、恐らくどれだけ練習してもきっちり思うような声を出すことは出来ないでしょう。
まぐれで狙った音が作れても、それはまぐれであってまた少し両声区のバランスが変わればその組み合わせでは同じように狙った音は出せなくなります。
つまりはその組み合わせのバランスが変わる度に調整しなければいけません、それは自分での練習でかもしれませんしレッスンを受ける必要があるかもしれません。
その点いつでも真っ白と真っ黒が作られる状態なのであれば、調子が悪ければどちらに問題があるか探るのは非常に容易になります。
おわりに
ボイトレって何やれば良いのかわからない・・・という方もこれだけはやっておいた方が良いという訓練です。これがきっちりと出来ている状態なのであれば、巷で流行りのミックスボイス云々のトレーニングも全く無駄にはならないでしょう。
ただこの分離=ファルセットが出ているのであればきっちりとそれと合わせて声区融合の手順を踏んで訓練するのが1番ですけどね笑
最後に本当に何度も言いますがこの声がしっかり意識して出せない内は何をしても声をこんがらがる状態なので今までこういった声を出したことの無い方は是非チャレンジしてみてください。