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声区融合(ミックスボイス)に絶対必要な3つのステップ

ミックスボイス

最近ミックスボイスに関する考え方や訓練方法等が見直されてきたといいますか、やっと昔ながらのクラシカルな訓練方法の大切さが徐々に認知されてきてるようなので、今回はその辺りの事について書いてみようと思います。

はるか昔の声楽訓練は今回紹介する3つのステップがとても重要で、これが一つでも欠けていると声区融合は成されないとされていました。

あなたが日頃やっているトレーニングや受けているレッスンはこのステップがきっちり出来ているか考えてみてください。広い音域を自在に歌えるようになりたいのに、紹介するステップが含まれていないのであればそれはいつまで経ってもそういう声は出ないと判断して良いと思います。

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step1 声区の分離

ここが出来てない状態で先のステップに行っても全く効果が出ない1番重要な部分

以前に書いた記事の中でも説明していますが、つまりは地声系の筋肉と裏声系の筋肉の使い分けという部分です。

これを知ると多くの人は「元々地声と裏声が分離してるから繋げたいんだけど・・・」とか「すでに分かれてるからこのステップはクリアしてるな」てな事になりがちなのですが、ここのステップで一番重要なのが

各筋肉群が意図していない所で稼働していないかどうか

という部分です。つまり本人は完全に地声だと思っている声に裏声側の筋肉が大きく関わっていたり、裏声だと思って出している声に思いっきり地声側の筋肉が関わっていたり、そういう状態になっていないかどうか?という事です。

声区で分けるならば男女ともに最初の換声点(ブリッジ・トランジッションエリア)までの発声で、地声声区で意図せずに裏声っぽくなったり、裏声声区で地声のような重たさがないように訓練しないといけません。

つまり最初は「繋げる」なんて事は考えないほうがいい

このstep1が出来ていないとこの先の2つのステップは絶対に達成できません。絶対にです。

なので全くの最初からトレーニングを開始する場合は訓練としてきちんとある一定の高さまではチェストボイスで出し、そこから上はファルセットで出すということがある程度のテンションで出来ないとだめです。

ある程度のテンションというのは小声ではダメだということです。この声区の分離というのは各筋肉群の使い分けという面もありますが、次のステップの大きな目的でもある強化するという意味も含まれています。

小さな声で練習してても意味が無いし、いつまで経っても大きな声で発声するということに慣れない状態を作りやすいので注意です。

ただ発声の癖によってはある程度のボリュームを出そうとすると、息を多く使いすぎて狙っている筋バランスにならないことも多いので、この辺りはトレーナーに聞いてもらうか自分の録音しながらどうなっているかをよく聞きながら訓練していくべきです。

ここで分離するのは地声と“ファルセット”です

裏声(ヘッドボイス)だと勘違いしてしまう人が多くいるのですが、この段階で裏声(ヘッドボイス)と地声(チェストボイス)を出し分けても意味が無いです。

なぜならこのステップでやりたいことは何度も書いているように

各筋肉群の使い分け

だからです。ファルセット以外の裏声声区の発声(ヘッドボイス)の場合は地声系/裏声系どちらの筋肉群も割合は違えど動いてる状態です。

じゃなくてこの最初のステップではこの発声時に重要な2つの筋肉群を意識してきっちり分けましょうということなんです。

ここでどうしてもファルセットが出なくてヘッドボイスになっちゃったり、チェストボイスが息混じりにファルセットっぽくなってしまうとこの先どんなトレーニングを積んでも声区融合は絶対に上手く出来ません。

【参考音源付き】裏声/ヘッドボイスとファルセットの違い
この記事は2015年8月に公開したものを書き直したものです。 裏声やヘッドボイスと呼ばれる声と、ファ...

融合と混合の違い

上で書いた地声(チェストボイス)/ファルセットが出し分けられない状態、それが混合している状態といって17世紀の音声教師達が1番声として良くないとした状態だったりします。

訓練課程でどうしても混合してしまうのであればそれは少しずつ矯正していけばいいですが、知らず知らずのうちに混ざっちゃってる状態というのは、もつれた糸を解くような難しい作業になります。

意図的に意識を持って混ぜているからヘッドボイスからファルセットにすることも出来るわけで、それが混合している状態だと困難です。ハイレベルな融合状態のシンガーであればそういった声を聞くこともありますが、混合状態のシンガーには出来なかったりします。

step2 声区の強化

各声区で使われる筋肉群のトレーニング

分離したは良いけど大抵はどちらか一方もしくは両方が脆弱な状態だったり、それらの筋肉群だけを使おうとするとスムーズに動かない場合が多いので、この段階で鍛えていくわけです。

この先には両筋肉群を同時に使うことをトレーニングしていくわけで、両方の強さが同じくらいにならないと上手く融合出来ません。

この段階でどちらの筋肉が弱いのか、もしくは使い方が良くないのかをしっかり見極めてその時の状態に応じたトレーニングをする必要があります。

つまり“強化”するにはまず分離しておかないと・・・

分離しているからどちらかを狙って強化できるわけで、step1の分離が一番大事と書いたのはこういう意味です。

まず何はなくとも分けておかないと、こんがらがってる状態でなにをやっても効果的にトレーニング出来ないというわけです。

分けられた状態であれば、その声を出していれば意識はしなくとも少しづつですが鍛えられていきますが、分かれていない混合している状態だと出し続けてもより一層混合を強めてしまう場合があります。

step3 声区の融合

みなさんお待ちかねのミックス・融合でございます

少し前から海外から入って来たメソッドはこのstep3、声区融合の部分をメインに行っている事が多かったのですが、そういったメソッドを実際にやっている方の中にはこう感じた方多いのではないかと思います。

ある一定のレベルまでは成長するが、そこから中々成長を感じない

こう感じるのはつまり上のstep1と2が出来ていなからなんですね。

私自身も経験があり、そういったメソッドを使いトレーニングしていて、やっていることは間違ってないが、根本的に何かが足りていないんじゃないか?と感じていろんなメソッドを探しましたが原因はこの3つのステップでした。

今回書いたこの3つのステップはどれが抜けても声を効果的に成長させることは出来ないんです。

3つのステップをしっかり意識して集中的に訓練することで始めて声区融合が図られます。

step1と2が出来ていたら徐々にですが融合は始まっていきます

ミックスしていくための訓練もしっかりありますが、それ以前にきっちり声区を分けて強化していればこの融合するという段階は忍耐力こそ必要ですが、特別難易度の高い訓練方法をしなければいけないわけではありません。

ただ忍耐力は必要です、声区を分けられて強化出来ているからといってすぐに融合出来るわけではありません。

17世紀にはこの声区融合は6年以上かかるものとされ(当時の主流ジャンルであるクラシック歌手の声を作る場合)毎日のように教師とレッスンしたとしてもそれくらいかかり、6年より短い期間というのは基本的にはあり得ないとされていました。

3つのステップがこなせていても焦らないで

細かく状態を見極め続けてトレーニングを重ねることが一番の近道

分離する時にも、強化するときにも、融合するときにも、その都度声の状態を見極めてその時に必要なトレーニングを続けていれば必ず融合しだします。

ただ上で書いたように基本的にはかなり長期間かかることだというのは頭に入れておいた方がいいでしょう。

最近よくある短期間で大きな成果が出ると謳っているメソッドの殆どがstep?で書いた混合状態を融合と勘違いしているか最初からその程度のレベルで完成としているかのどちらかです。

現代のポップスやコンテンポラリーミュージックを表現する声を作るのにがっつり6年以上かかるかと言われればそこまでかからないかもしれませんが、まぁ現状プロフェッショナルとして舞台に立っているどの分野のシンガーも6年程度はみなさん訓練をしていますよね、それ以上のキャリアを持つ人が大抵でしょう。

仮に6年かかるとして、その6年間を長いと捉えるのか短いと捉えるのかは人それぞれでしょう。私は長い人生の内6年間というのはそこまで長くないように思います。

「一瞬で!/○週間で!/○ヶ月で!」ボイトレは声を劇的に成長させられるか?
今回のテーマはタイトルの通りです、ボイストレーニングに限らずいろんな分野でよく目にしたり耳にしますよ...

また6年間というのはクラシックに通用するような声になるまでという測り方なので、恐らく多くの方が目指しているジャンルであれば訓練の中期以降にはどんな場所で歌っても問題ない程度に声は出来ているでしょう。

これらの手順をしっかりと学べるボイトレ本

毎度紹介していますがYUBAメソッドです

ボイトレ本で独習される方にちょっと役立つ情報 YUBA本編
※この記事は2013年11月2日に公開したものを新たに追記・書き直したのもです。 以前に公開していた...

かなり前から記事にして紹介しているように、全くのボイストレーニング初心者ほどおすすめです。

今回書いた3ステップがきっちりとトレーニングとして収録されています。

ボイトレ始めたばっかりで右も左も何が正しいかもわからない人は特にこれ買って練習してればいいです。

また最近は私自身のレッスンでも取り入れている、様々な地声・裏声を取り出して訓練するという所謂アンザッツというメソッドを解説している武田梵声先生の書籍もおすすめです。

おわりに

私自身ボイストレーニングの初めは海外で有名になっていたメソッドのトレーニングを受けていましたが、ある一定のレベルまでは順調?にアップしていたのですがそれと同時に依然としてブリッジ付近の不安定さや声の強さに悩まされていました。

そこでなにが足りないのか、なにが余計なのかを考えて結局よくわからなかった笑ので基礎から叩きなおしてもらおう!と思い立って超クラシックのレッスンを受け始めました。

そのときの先生に最初のレッスンで「あんまりよくない混ざり方(混合状態ということ)しちゃってるね(;・∀・)」といわれ絶望したのを覚えています。

しかしそれまでやってきたトレーニングやレッスンが間違っていた・無意味だったとは全く思いません、払った料金以上の知識やトレーニングをしていく上で大切な体感を訓練で得られました。しかしそこで満足できなかった、もしくはそういったトレーニングでは埋められない要素が私にはあったということです。

ここで書いた私のような順調に声は伸びてるんだけどなにか足りない気がする・・・といった場合やいつまで経っても声が強くならない場合は今回の記事の内容を参考にいてみてはいかがでしょう?

またここで書いたような所からしっかり叩きなおしてほしい!という方は是非レッスンを受けてみてください、時間は掛かるかもしれませんがしっかり努力すれば絶対に声は強く育っていきます。

最後にここに書いた事ははるか昔にまるまる一冊の本になってたりします。↓の本は紹介したYUBAメソッドの源流となっている理論を説明したものです。

そしてこちら↓はアンザッツ、フースラーメソードの元となっている書籍です。

どちらも今現在まであらゆるボイストレーニングメソッドの源流となっているメソッドです。ほぼ文字だけでめちゃくちゃ難しい内容ですが詳しく知りたい方は買って読んでみてください。