なんだかシリーズものみたいになってきている『声区融合のヒント』に関する記事です。今回はグリッサンドという技法を使った融合訓練についての解説です。
グリッサンドって何?という方もいらっしゃるかもしれません、まぁ参考音源を聞いていただければ何をやってるかはすぐ理解できますが、簡単に言葉で説明しておくと
一音一音の音高を区切ることなく、隙間なく滑らせるように流れるように音高を上げ下げする演奏技法をいう。
https://x.gd/bGMnl
ということです、完全に Wikipedia からの引用ですが。この技法を声で行い、融合を促す訓練ということになります。
1. 裏声から地声にグリッサンドで下降する
参考音源:成功パターン
恐らく多くの方が裏声から地声に下降する方が失敗しにくいと思いますので、まずは裏声からやってみましょう。
おさえておきたいポイントや注意してほしいポイントは以下の通りです。
- 始点と終点は必ず明確な地声と裏声にする
- 僅かな断絶も起きないよう慎重に移行する
- あまりにも速く移行しようとしない
です。これらのポイントをおさえておかないと、融合訓練としての価値が著しく下がってしまうため、注意しながら練習しましょう。
参考音源では G4#→G3# という音域でやっていますが、換声点(C4~F4付近)挟んだ音域であれば、もう少し高い・低い音域でもいいですし、もっと広い音域、自分の出しやすい裏声と地声を繋いでやってもOKです。
参考音源:失敗パターン1
こうなってしまうと今回紹介している訓練方法をやっている意味が全くないため、次に紹介する地声から裏声に移行するパターンを試してみてたり、どうしても難しい場合は、過去に紹介しているもっと強度の低い融合訓練をやってみてください。
参考音源:失敗パターン2
これは地声・裏声ともに中途半端な状態で繋いでしまっているパターンです。意外に自分自身がこういう状態になっていても気づきにくかったりするので、不安な方は録音しながら、成功パターンの音源と聴き比べながら練習してみてください。
2. 地声から裏声にグリッサンドで上昇する
参考音源:成功パターン
これもやることは裏声→地声と同じなのですが、やはり地声から移行する方が失敗しやすいという方が多いと思います。
地声をしっかり出すと裏声に上手く移行できないし、かといって地声を弱く出すと裏声との差ができずそのまま上昇しきってしまう、そういう状態になる方も多いと思います。
参考音源:失敗パターン1
裏声に比べて地声が強い場合や、地声の練度が低い場合にこういう状態になりやすいです。ただこうなってしまう場合にどちらの声区の問題なのか、片方だけなのか両方に問題があるのか等など、改善する練習方法も全く変わってくるため、独学の方は今一度、両声区を徹底的に鍛え上げる必要があります。
参考音源:失敗パターン2
地声と裏声がよくない結びつき方、つまり混合している場合は、声区をスムーズに移行させようとすると、こういう風にしか出せないという状態に陥りがちです。
この場合はまず徹底的に地声と裏声を分離させる必要があるため、声区融合に関する訓練はしばらく時間を空けてから挑戦することをおすすめします。
まとめ:緻密にやると意外に難しい練習
今回の訓練方法は以前に紹介していた強調対比の記事でNGパターンとして紹介しているものと全く同じです。
↑の記事ではこうなったらダメですと紹介していましたが、今回はその状態を狙って作ってみましょうということでした。
ガクッと切り替わるわけでもなく、かといって微妙な発声状態で繋がっているわけでもなく、意図して地声・裏声の間をしっかり埋めて繋げるという訓練です。
シンプルな訓練内容ながら、しっかりできればめちゃくちゃ効果があります。というかこういう発声ができないともっと難しい訓練なんて絶対にできないので、ゆっくりでいいので、丁寧に真似して練習してみてください。