以前にメッサ・ディ・ボーチェをメインに取り上げた、練習方法の強度を変えてやってみようという趣旨の記事です。今回は初学者でも取り入れやすく想像しやすい裏声を使い解説していきます。
独学で練習している人はもちろん、レッスンを受けてはいるけど、出されている課題的な発声を上手くこなすことができないという場合にも、今回の練習強度の調整は役立つと思いますので、ぜひ取り入れてみてください。
まずは行いたい練習方法の分解から始める
トレーナーからこういう練習をしてみましょうと提示されたものでも、書籍やネットで紹介されていたものでも、まずはその方法がどれくらいの強度なのか分解して測ってみましょう。
基本的な発声の強度というのは
- 音高(高いほど強い)
- 声量(大きいほど強い)
- 持続時間(長いほど強い)
- 音色(倍音が多いほど強い)
これら声の要素によってある程度測ることができます。ちなみにこの中でも練習の強度に影響が最も大きいのが2の声量です。声をより大きく強く出そうとするのが、練習の強度、つまりダンベルの重さを重くする要素が最も強いということです。
さらにこれら↑の要素の他にも、練習方法には音階(スケール)も関わります。スケールによる強度の傾向などはこちらの記事からどうぞ。
これらを今やっている練習方法に当てはめてみて、それぞれがどういう状態を狙っているのか明確にしてみてください。
この記事では一つの例として、やりたい練習方法があるけど、それが上手く再現できないという状況を想定して進めていきます。
練習サンプル1
こう発声したいけど、高さが届かない、息が保たない、高さと持続時間をクリアすると音色が大きく変わる、地声に切り替わってしまう、等などそういう状態だったとしましょう。
ではこの練習方法の強度を調節して、難易度を下げてみます。
強度を調整して簡単にしてみる
練習サンプル2
音量と音高を下げて、音数を減らし、持続時間も短くするとこうなりました。サンプル1が上手くできない場合、これくらい調整して難易度を落としてみましょう。
ちょっと簡単にし過ぎじゃない?と思うかもしれませんが、サンプル1をやろうとして、全く狙った状態にならず、明後日の方向を向いた練習を続けてしまうのであれば、これくらい調整してもいいから、とりあえず狙った状態になっている練習を繰り返すほうがよっぽど意味があります。
最終手段は「単音」「スタッカート」「小声」
サンプル2のような調整をしても、問題がでてくるということもあると思います。
そんなときはもう思い切って、単音+スタッカート+小声でやってみましょう。
元の練習方法から見る影もありませんが、自分が狙った状態の発声になってくれて、それが現在の喉に不足した要素を補ってくれるのであれば、単音で短く小さく出す訓練でも全く問題なく喉は成長していきます。
ただ単音+スタッカート+小声での練習が全く問題なく上手くでたとして、それを延々と繰り返しても意味がありません。
そこから音数を増やしていったり、単音で持続時間を伸ばしてみたり、音量・音高を変えたりと、少しずつ難しくしていき、全くできなくはないけど、難しいな~と感じる程度に強度を調整する必要があります。
まとめ:上手く背伸びできる程度に調節しましょう
色々と小難しいことを書いてきたんですが、この記事で伝えたいことは非常にシンプルで「全く再現できない練習方法を闇雲にそのままやろうとするんじゃなく、今現在の自分がクリアできる・・・かもというレベルまで上手く練習方法をカスタマイズしましょう」たったこれだけのことです。
全くできない難しすぎる練習も、当たり前にクリアできる簡単すぎる練習も、どちらも等しく意味はありません。
重要なのはちょっと頑張らないと、ちょっと集中しないとクリアできない難易度の練習を、如何に数多く繰り返せるかということです。
そのために、まず自分の練習状況をよく思い返して、ここで書いたことを参考に上手く練習方法をカスタマイズしてみてください。