ボイストレーニングの練習をする上で、注意点・抑えておくとより効果的になるであろうポイントを少し深掘りするシリーズの第5回です。
今回は練習の速度について。実はこの速度についてはあえて記事にするつもりはなかったのですが、最近クライアントさんから送られてくる練習音源が、立て続けに今回のテーマである、練習する際の速度がむちゃくちゃだったこともあり、少し解説しておこうと思います。
基本的にはこのシリーズや練習に必要なものに関する記事を意識して練習していれば、おかしな練習の速度にはならないと思いますが、自主練習だと色々とブレやすいので、いくつか注意点を紹介していきます。
ポイント1:矢継ぎ早に音高を変えていないか
今までいろんな方の練習している際の音源を聞いてきましたが、このポイントがむちゃくちゃな人が一番多いです。
自分で鍵盤を使ってスケールを弾いてないアカペラでの練習や、練習するための音源としてスケールが録音されているものを利用している場合に起こりやすいです。
とりあえずそのスピードに着いていくために必死になり、それ以外の要素が全て疎かになっていることが非常に多い印象です。
重要なのは、狙った音高に対して、狙った喉の状態で狙った音色の発声ができているか?これだけです。それさえ守られているのであれば、練習の速度・テンポ自体はゆっくり落ち着いてやってあげればいいのです。
非常に早い速度・テンポでの練習は何だか『練習している感じ』にはなりますが、大抵は細かい部分を見れていないため、意味のある練習にはなりにくいです。
とりあえず幅広い音域をカバーすることや、練習を早く終わらせようとする気持ちで急いてしまわないように、狭い音域でも、短い練習時間でも、狙った状態を狙った通りに再現できている時間を増やすという意識が重要です。
ポイント2:スケールを歌う速度自体が早すぎないか
スケールを歌う速度・テンポや長さというのは、狙った練習の強度によって大きく変わります。
狙った状態を探り始めた段階で、非常に早い速度・テンポでスケールを発声しても、絶対にどこかの要素が抜け落ちた状態になっています。
音高がブレている(酷い場合は大きく♭する♯するなど)とか、狙った音色になっていない箇所がある、等です。こんな練習を繰り返しても意味はないです。
このポイントも基本的には自分自身でスケールを弾きながら練習すれば、無意味な爆速スケール練習になることは少なくなると思いますので、できれば自分で鍵盤を弾く、難しければスケール音源などで、音高が変わるごとに一呼吸置けるくらいテンポを落として練習しましょう。
ポイント3:練習メニューを変えるのが早すぎないか
練習するメニュー自体を変える際にも、ほぼシームレスにいきなり発声し始める人が多いのですが、これもあまり良くありません。
練習に割く時間を切り詰めているような人にとっては、さっさと次のメニューをこなさないと!と思って、すぐさま違うメニューを始めたくなりますが、一旦落ち着きましょう。
なぜなら、そうしないと脳が練習メニューが変わったことに気づかないからです。
脳はどこからが始まりで、どこまでが終わりというのを判断できません。意識として「ここからは違う練習だ!」と思っていたとしても、シームレスに前の練習から次の練習に移ってしまうと、狙う状態も音色も違うのに、脳はそれらを作るモードになっていません。
つまりどんな練習をしても、狙いのズレた状態しか引き出せず、無意味に時間を使うことになります。
ですので、練習するメニュー自体を変える際はできるだけブレイクタイム(2~3分程度)を挟み、脳が「この動作は一旦途切れたから、ここからまた始めよう」というモードになるように仕向ける必要があります。
まとめ:とにかく落ち着いて練習しましょう
時間的な制約もあると思いますし、とにかく沢山声を出そうとする心意気は素晴らしいんですが、なにせ一つ一つの練習をザラッと流してやっちゃう方が多いみたいです。
今回書いたポイントも、自分で鍵盤を弾きながら、録音し、それを聞き返しながら進めるという流れで練習していれば、そんなに意識する必要もないことなので、冒頭でも紹介した記事をよく読んで、自分に今必要な練習方法や、効果的なメソッドを探すよりも前に、効果の出る自主練習のための環境作りをして、その上で練習していきましょう。