ボイストレーニングのポイントとなる注意点や、抑えておくとより効果的な部分を少し深掘りするシリーズの第2回です。
前回は声の立ち上がり部分という、あまり一般的ではないけれど、めちゃくちゃ重要というポイントを解説しましたが、今回は表面的には意識してるけど練習してると結構無茶苦茶になりがちな動きについて解説します。
発声強度の調節にも役立ちますし、練習のクオリティが保てているかという判断材料にもなるので、普段やっている練習に当てはめて考えてみてください。
ポイント1:意図せず声が動いていないか
一番よく起こりがちなのは所謂トレモロやちりめんビブラートと呼ばれるような、細かい声の震えだと思います。
↑こういう状態ですね。練習していると、狙った高さに届かせることに夢中になりすぎて、こういう小さな動きに気づかなかったり、気づいていたとしても「まぁこれくらいはええやろ」となりがちです。
しかしこれを改善しようとしないと、発声訓練的に必要な強度が作れないという場合が非常に多いため、こういう動きがでてしまっている場合は、あえて大きな動きを付けてみましょう。
↑こうしてあげることで、意図せず起こる動きを抑制し、喉頭が安定しやすいので、勝手に震えてしまうくらいなら、これくらい大げさに動きを付けて、意図的にコントロールしている状態を練習しましょう。
ポイント2:換声点付近でも動きが維持できているか
ポイント1は意図せず起こることに対する対処法ですが、ポイント2はクリアできている人向けです。どんな発声をしても勝手に声が震えたりノンビブラートでしか出せないという場合は、まずポイント1をしっかり繰り返し練習してください。
このポイント2は動き自体はそこそこコントロールできているけれど、換声点付近、つまり地声でも裏声でも難しい音域に差し掛かったときに、動きが散漫になっていないかということです。
↑こういう状態になっていることが非常に多いです。換声点という難しい音域で如何に発声状態をコントロールできるかというのが、発声訓練的にはめちゃくちゃ重要です。
鳴らしやすい音域での動きだと換声点ではその動きを維持できないということであれば、換声点付近では動きを変えてもOKです。とりあえず意図した動きになっているかが訓練の価値を決めます。
↑こんな感じでも良いです。高い音域と比べると動きの大きさが変わっていますが、それでも勝手に震えだしたりストレートになって音が途切れたりということが起きるより何倍も良いです。
ポイント3:ビブラートは発声が安定してから
諸説あり、未だに確実な研究結果はでていませんが、基本的にビブラートというのは発声が安定している状態でしか起こりません。意図的にビブラートを起こそうとするのは絶対NGとしているメソッドもあります。
なので綺麗に声が揺れる状態というのを求めすぎなくていいです。発声に適切な圧力が作れるようになるとポイント1で紹介したような意図的に起こす動きとは少し違う規則的な揺れができてきます。それがビブラートです。
それまでは訓練で用いる発声は意図して付ける動きを利用しておけばOKです。練習の中で美しい振幅を作ろうとはせず、訓練の精度を上げるために動きを利用しましょう。
まとめ:声揺らしていこうぜ
今回は全て裏声でのサンプルを使い解説していますが、地声であっても同じです。ただ裏声の方が小さなブレが感知しやすいため、裏声で解説しました。
地声の場合は、低い音域だと動きがブレるということはあまり起こらないかもしれませんが、換声点付近に差し掛かると一気に動きがなくなるという傾向が強いように思います。
つまり難しい音域になると
裏声 → 細かい動きが勝手に入る
地声 → 動きが付けにくくなる
という感じでしょうか。これらを改善するために、とりあえず自分が意図的に起こせる範囲の揺れを付けていきましょうというお話でした。