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アンザッツを訓練する際の注意点|重要なのは方向や意識ではない

ボイストレーニングTips
Image by SnapwireSnaps from Pixabay

一昔前の「◯◯に声を当てる」といった間違った解釈をされること自体は少なくなってきたアンザッツですが、未だに本来の目的からかなりズレた解釈の上で指導されていることが多いです。

ボイストレーニングのレッスン経験ありという方々が体験レッスンを受けられると、大半の方が「アンザッツは教わりました」と仰られるのですが、実際に声を聞いてみると、ほとんどが私の考えるアンザッツの何番にもなっていない状態だったりします。

今回はアンザッツを訓練する際に知っておくべきこと、注意しておいたほうがいいことについて解説していきます。

今現在、独学でアンザッツの訓練を取り入れている方や、レッスンを受けていてアンザッツを指導されているという方はぜひ読んでおいてください。

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アンザッツとは?どういう練習?

アンザッツはフレデリック・フースラーが提唱した発声訓練のアプローチです。

喉頭懸垂機構や弾性足場と呼ばれる、喉頭(声帯が張られている4つの軟骨が組み合わさってできたユニット)を釣っている筋群をバランスよく緊張させ、安定させた中で発声するための訓練です。

喉頭を引き下げたり、引き上げたりしながら発声することで、フースラーが重要視している懸垂筋群を柔軟かつ自在に緊張させることを促します。

アンザッツには番号がついており、その番号毎に訓練します。アンザッツには1番から6番まであり、3番はaとbに分かれているのが一般的です。

なので簡単にまとめると『喉の筋肉を使い分け、7つの声を出し分けて訓練する』というのがアンザッツということになります。

よくあるアンザッツの間違い

アンザッツについて書かれているフースラーが書いた書籍(日本語訳版)にはアンザッツの説明に「声のあて方」と書いてありそういった説明がされているため、これらの文章の表面だけをなぞって「◯◯(身体の場所や位置)に声をあてるとよく響く」といった解釈がされてしまい、少し前で様々な発声教育の場で「◯◯から声がでるように」や「◯◯を引っ張るように声をだしましょう」といった指導がされる状態になっていました。

しかし実際に重要なのは懸垂筋群の緊張により

  1. 声道・共鳴腔が変化する
  2. 共鳴・共振が体感できるレベルで起こる
  3. 声の音色が変化する

上記のようなことが起こることです。

ネットなどの普及により、最近では単純に「◯◯に声をあてる」ということがアンザッツの本義ではないということは知られるようになりました。

それでも未だに懸垂筋群の緊張を「前上」「前下」「後上」「後下」といった方向で捉えて、アンザッツ◯番は「前下」と「後上」を意識して/その方向に向かって発声しましょうといった指導方法が氾濫しています。

しかし上記の通り、懸垂筋群を緊張させて実際に咽喉頭に変化が起こることで声が変わりアンザッツになるわけなので、◯◯に声を当てようとしながら/◯◯の方向を意識しながら発声するだけではアンザッツにはならないということです。

音色に明確な違いが生まれているか?

この記事の冒頭に書いたように、体験レッスンに来られる方の中でアンザッツを指導されたことがあるという方々は、アンザッツのナンバリングによる音色の変化がほとんどない状態で練習していました。

当たり前に番号が分かれているということは懸垂筋群の使われ方も違うということなので、絶対に違う音色の声になります。そもそも似たような音色になるようであれば、わざわざアンザッツとして分けて訓練する必要がありません。

もっとも多いのはアンザッツ4番と6番がほぼ同じ音色になっていることです。

確かに4番と6番はほとんど同じ懸垂筋群を使いますが、それでも番号として分けられているということは、ほとんど変わらない音色だったり似たような声なわけがありません。

これらを単純に「◯◯の方向を意識しながら発声している」「◯◯に向けて発声している」からといって出し分けられていると考えてしまうとアンザッツを用いて訓練する意味が全くありません。

まとめ:なぜアンザッツか?ということをよく考えて

そもそもボイストレーニングの初期段階でいきなりアンザッツを取り入れたり、練習方法として処方されている方が非常に多いようですが、アンザッツを出し分けること自体かなり難易度が高いということはあまり知られていません。

地声も裏声も明確にだし分けられていないような超初期段階からいきなりアンザッツだ!といって、懸垂筋群を強く関わらせて発声するというのはかなり危険度が高いです。ほとんど100%の確率でめちゃくちゃに混合します。

なので独学の場合は、今現在の自分自身の発声能力をしっかりと鑑みて、アンザッツを取り扱ってもいいレベルなのかどうか?ということを考える必要があります。

レッスンを受けていてアンザッツを練習しているけど思うような声の変化が起こらないという場合は、トレーナーにアンザッツの出し分けができているか?続けることで改善していくのか?ということをアナウンスしてもらう必要があるでしょう。

アンザッツはその理論がきっちりと理解できて実践することができれば、非常に効果的な訓練方法です。私自身も伸び悩んでいたボイストレーニングの大きな転換期になったのはアンザッツを取り入れてからです。

ネット上でも万能の訓練方法のように紹介されているフシがありますが、このブログで何度も書いているようにボイストレーニングで重要なのは「どういう練習をするか」ではなく「どのように練習するか」ということです。

アンザッツを知り、なんとなく紹介されている音色を真似しようとしてもそれがアンザッツとして成立する確率は限りなく低いでしょう。

アンザッツについての詳しい解説や練習方法を知りたい場合は、ぜひレッスンにお越しください。

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