最近はよくミックスボイスに関する記事を更新しているのですが、ボイストレーニングには裏声が重要らしいということは結構知られてきたように思うのですが、それと同時に地声の重要性が少し軽視されてしまっているようにも感じます。
今回はミックスボイスを語る上でよく出てくる裏声ではなく、地声(チェストボイス)にフォーカスして、それらの重要性と鍛え方を解説してみようと思います。
地声・チェストボイスとは?
地声系筋群を主に使った発声
どういう発声のことをいうのかという部分に関しては、以前に公開したこちら↓の記事を参考にしてください。参考音源も載せていますが、多くの方が分かりやすい言葉・イメージとしてはしっかりとした喋り声って感じかな~と思います。
再度同じことを書きますが、このような呼ばれ方をしている発声を地声/チェストボイスと定義しています。
- 表声
- チェストボイス
- 喋り声
- 胸声
- ヴォーチェ・ディ・ペット
音域は~E4付近(真ん中のドの上のミ)まで
それより上の音域になると地声系の筋群よりも裏声系の筋群の使用率が優勢になるといわれています。
この辺りの音域を発声しようとしていると、通常は声帯を縮めて分厚く使う地声系の筋肉だけでは音高が上がらなくなるため、一気に裏声系筋群を優勢にする(ブレイク・裏返る)ことで音高を上げます。そしてそこを上手くグラデーションさせられるのがミックスボイスです。
ちなみにこの地声の最高音、つまりは換声点/ブリッジに関しては、男女で違いがあるという説と男女で差はなく一律にE4~F4に換声点があるという説があったりします。
なので一概には言えないのですが、レッスンを受講していただいている女性のクライアントさんの声を一定数聞いた上での感覚としては、はっきりとした地声が発声できている女性であれば、男性同様E4付近で出しにくさやつっかえる感覚を感じる方が多いようなので、私個人としては男女ともにE4付近に換声点があるものとして考えています。
換声点・ブリッジ=地声でも裏声でも出せる音域
両側から鍛えていく必要がある
以前に紹介したメッサ・ディ・ヴォーチェという声区融合を促進させる訓練がありますが、これはC4~F4という換声点ど真ん中の音域で訓練します。
そしてその音域の中で何をするのかというと、薄い裏声から充実した地声に徐々に変化させていきます。
つまり声区融合、ミックスボイスの状態を作るために必要なこの訓練はC4~F4という音域で出せるしっかりとした地声と裏声がそもそも必要な声の素材ということになります。
地声張り上げ癖も訓練としてみれば全然OK
よく発声の悪い癖として挙げられる張り上げ(地声張り上げ・プルチェスト)も、訓練としてみれば十分に効果的な発声です。
以前にTwitterでこんな事を呟いていましたが、こういう理由からです。
「張り上げを直す」「ハイラリンクスを直す」っていう文言をよく見るけど、直さんでええからそれ以外の出し方を増やす方向で頑張れ( ◉◞౪◟◉)
— 木田圭一 (@KidaKeiichi) 2017年11月16日
張り上げもハイラリンクスも、意図してその状態を作ることが出来るのであればそれはもう癖ではなく自在性の1つなので、それらを封印して使わないよう使わないようにするのではなく、それらも現状は癖でしかないかもしれませんが、それを持ったままで、他の出し方を模索してみてくださいということです。
ただ上でも書いたように本来地声と呼べるだけの機能が保てるのがE4やF4付近なので、それ以上の音まで地声を引き上げようとしても絶対に裏声系の筋肉が働き出します。
またそれをさせないように出そうとすれば、息を思いっきり吹き上げて呼気圧でなんとか音高を上げるという方法でしか音が上がらないため、訓練としてみるのであればE4~F4辺りで地声は張り上げるのをやめるべきです(そもそもこういう発声状態は声帯が非常にダメージを負いやすいので)。
同じ力関係だから拮抗出来る
地声も忘れず鍛える
ミックスボイスには裏声が必要なんだ!と知り、裏声を徹底的に訓練するのも必要なのですが、それだと必要な要素の丁度半分しか意識出来てないってことです。
そこにしっかりとその鍛えた裏声に負けないくらいの地声があって、初めて声区を自由に行き来出来る綱引き状態を作る素材が集まったといえます。
喋り声で出せてるんだから地声はもう十分!ではない
普段喋っているときの音域というのは人それぞれですが、1つ確実に言えるのは、普段から換声点付近(地声として出すには結構きつい音域)まで喋り声で出してる人はほぼいません。
つまりその高さ(E4やF4付近)までは意識して出せるように練習していく必要があるということです。
喋れてるからOKじゃ全然ありません、私も昔にそういうった勘違いをしていたために、喉の開発が大幅に遅れた経験がありますので、皆さんはご注意ください。
練習する上での注意
あまりにも裏声系の筋肉が協力している状態になってないか
何度も出してしまい恐縮ですが、この↓記事でいえば参考音源2の薄い地声みたいなトーンで練習していても地声の訓練としてはあまり効果はないでしょう。こういうトーンは筋肉の状態でいえば裏声系の筋肉が多く働いているといえるからです。
出来るだけ参考音源1のようなしっかりバリッとしたトーンの地声で、換声点付近を出せるかどうか練習してみてください。
初めのうちは無理しないように
地声で比較的高音域を出し慣れていない時はどうしても声帯を閉鎖しすぎたり、仮声帯が寄りすぎてガリガリバリバリ鳴ってしまうことがよくあります。
しかしそうなると肝心な動いてほしい筋肉が十分に動いてなかったりするので、最初はある程度出しやすい音域の地声とトーンが大きく変わらない範囲まででOKです。
これ以上高くすると完全に声が潰れる!とかガリガリ鳴り出しちゃう!っていう音域まで頑張らなくていいです、その手前で意図したトーンをコントロール出来てるところで止めてください。その付近での柔軟性が出てきたら徐々に上の方まで楽に出せるようになるので。
まとめ:両方じっくり育てていきましょう
男性は裏声、女性は地声が弱いとされていますが、まぁボイストレーニングをやってみようかなと考える人なのであれば大抵は両方鍛えていく必要があるでしょう。
片方はもう十分に鍛えられている!残りはもう片方だ!なんて状態の人は私は今まで出会ったことがありません。基本的にはどちらも育てていく余地が、大なり小なりある人がほぼ100%です。
なので案外当たり前にできてると思っているのも、しっかり分けて見直してみると穴がいくつも見つかったりします。
それを「まだこんなに出来ないことあんのかよ~」と思うのではなく「ここを埋められたらもっと良くなりそう!」という前向きな気持ちで捉えて練習していきましょう!