質問受付再開の記事を公開した日から結構な数のご質問頂いておりありがとうございます。
今回の質問は内容や質問文自体がしっかり書かれているのですが、ちょっと難しいテーマなので文字にしてお答えするのが難しいのですが、出来うる限りお答えしようと思います。
まずは質問を確認してみましょう
ご質問の内容 ご質問者様:男性 永井さん
ミックスボイスを強くしていくアプローチについて質問させて頂きたいと思います。
「ミックスボイスを作る/強化していく上で大事な母音の調整について?」では「力強いヘッドボイスを出すには母音を操作し、閉じない/少し開くという調節が必要になります。」とあります。
また「結構勘違いしがちな強いミックスボイスと強い声門閉鎖とは」では、
強いミックスとは「正しい発声のバランスのまま喉頭原音を大きくする」
とあります。すなわち「母音を開く」という動作は「喉頭原音を大きくする」という動作と同等であるということでしょうか。
そして「母音の操作」に関連して、コーネリウス・L・リード 著 『ベル・カント唱法 その原理と実践』には「母音の純化」という単語があります。
その「母音の純化」とは「発声の際、子音と母音を分離し、母音には力みによる歪み、息漏れのないような状態で発声すること」
と解釈してよろしいのでしょうか。YUBAメソッド等では「母音間の変化はグラデーションのように混ざり合いながら変化していく」という旨の解説もあり「母音の純化」という単語の指す意味が今一つ理解できませんので、お教え頂きたいと考えました。
最後に、歌声を形成する重要な要素は、
・喉頭の位置
・CT、TAのバランス
・息の量
これらの他にどのような要素が挙げられるのでしょうか。質問は下記の3つです
1. 喉頭原音と母音の関連性
2. 母音の純化とは
3. 歌声形成の重要な要素何卒宜しくお願い致します。
余談ですが、お時間がありましたら以下の質問にも回答していただければ幸いです。
・デスボイス、ホイッスルボイス発声時の声帯の様子
・歌手の発声が理想的であるか判断するために注意するべき歌声の要素
・JPOPにおける理想的な発声の歌手
お答えする前にちょっと注意して頂きたい点
過去記事の記述ははっきり言ってあまり参考になりません・・・
最近特に思うことなのですが、私自身日々勉強して新しい知識やメソッドに関する訓練を行っています。
なので過去に「これが正しいであろう」と思って書いたことややっていたことが最近になって「あんまり意味ないかもな・・・」とか「これを意識しすぎるのも良くないな・・・」とか思うことが多々あります。
こういう事がまさに過去に書いた記事の中にもあります。
ですのでここで明言しておくと「公開日の古い記事の内容はあまり参考にしないでください」ということです笑
今回頂いた質問もかなり古い記事を参照されていますが、この記事を私自身今読んだら「うーん・・・」と思うこともあり、そういった部分で今の知識や経験からの回答では、過去の記事を読んで頂いてお送り頂いた質問とではマッチしない部分が出てくると思いますがご了承ください。
そしてそんなことを言っているこの記事でさえもいつか未来の私が「この記事は全く参考になりません笑」なんて言い出す時が来るかもしれません。
まず一つ目の質問【喉頭原音と母音の関連性】
母音の操作と原音の大きさはリンクしません
一つ目のリンク先の記事は訓練方法として「今まで主に母音の操作で声をコントロールしていた方」に対する方法です。二つ目の記事では「筋肉バランスでの事」を主に書いているのでこれらの内容はリンクしません。
喉頭原音というのは二つ目の記事で書いたあるように呼気によって出来た声の元という事以外のなにものでもありません。
そして母音の調節というのは「声帯の調節」と「少しの口腔や舌の調節」とイコールなのでこの2つを同じものとしてしまうと全く整合性がとれません。
二つ目の質問【母音の純化について】
基本的な考えは質問文の内容でいいと思います
あまり小難しく考えなくてもいいかなと思います。「純化」なんていわれるとなんだかすごく難しく見えますが、私はこの「母音の純化」というのはどの音域でも出そうとイメージした母音を維持し続ける事だと思っています。
またイメージした母音を維持し続けることが出来る喉のバランスというのも純化に必要な、もしくは純化で得られるものだという考えです。
質問文のYUBAメソッドの母音間の変化というのもようは最初にイメージした母音の調節をどの母音に移行しても大きく変えないでね?と言ってるんだと思います。
三つ目の質問【歌声を形成する重要な要素】
「息」と「喉」でいいんじゃないですか?笑
【重要な】とするならばやっぱり喉ですね。喉頭の位置もCT/TAも重要ですが、それらだけで語れるほど単純でもないし、声というもの自体が未だにしっかりと解明されていない部分が多く、メソッドによって重視する部分も違います。
なので一概にどれとどれという風に考えるより
喉という楽器
として考えるほうが健全だと思います。
声を強くしていくアプローチについて
超簡単にまとめてしまうと
声を強くする・大きくするということは
- 声帯が受け止める息の量を増やす
- その増えた息の量でも思ったように喉を調節出来るだけの筋力と神経を作っていく
という事でまとめられます。
余談について回答
「JPOPにおける理想的な発声の歌手」はまた今度記事にします
要は日本人の歌手で発声の上手な人は?という質問だと思いますが、この質問は他にも多数頂いていますので今度気が向いた時に記事にしたいと思います。
ただ理解できる言語で歌っているという点からも、かなり好き嫌いによる評価になってしまうので、誰もが同意するような内容にはならないと思います。
「デスボイス・ホイッスルボイス」について
これもよくレッスンでも聞かれるのですが、どちらも未だにしっかりとした科学的な根拠がなく、推測の域を出ない研究しかされていないのが現状です。
デスボイスは仮声帯を使った発声とされていますが、仮声帯自体が書籍や論文によって「発声には一切影響しない部分」とされていたり「これのおかげでエッジやノイズのある音になる」としているものもありしっかり確証されたものがないので現状はなんともいえない感じです。
ホイッスルボイスも同じです。高音を出すために最大限引き伸ばされた声帯の振動部分をさらに短くして出しているというのが今のところ有力でしょうか。
ただこれも実際にホイッスルボイスを綺麗に出せる人(研究として通用する一定人数)の喉にスコープを入れて観察した記録が圧倒的に資料として少ないので正確とはいえません。
「理想的な歌声かを判断する要素」について
理想的な歌声というのがどういうものなのか私個人では定義付け出来るものではないので、ここでは声区融合がされているかどうかという定義で話を進めます。
- 声量のコントロールが容易に出来る
- ビブラートがかかる
- 地声/裏声の分量を任意に調節出来る
- 長時間歌っても喉に大きな負傷や負担がない
これくらいでしょうか。他にももっとありますが簡単に文字に起こせるのは私的にこれくらいです。
これらが容易に行われているようであれば歌声としても自由度の高いものであると思われます。ただこれらがないと理想的な歌声ではないのか?というと全くそんなことはありません。
基本的に喉や声帯を壊さない範囲であれば出しちゃダメな声なんてないし、それを支持する人がいるのであればそれは十分魅力的でその人にとっては理想的な歌声です。
おわりに
少しマニアックな内容でしたがいかがでしたでしょうか?
やはり声に関することを文字でお伝えするのは難しいですね。恐らく質問者の方もこうして回答されてみると「こっちが聞きたいことが回答されてないな・・・」と思う所が多くあると思います。
なので思ったような回答ではないかもしれませんが、あまりにも質問とズレている場合は再度ご連絡ください。出来る限り記事の修正や個別返信しますので。
それでは今回はここまで!