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無理なベルト/ベルティング発声の練習に注意

ボイストレーニングTips
Image by gmsjs90 from Pixabay

最近初回レッスンをした2名のクライアントさん、どちらもレッスンを受けた経験はなく、独学でネットで紹介されていた練習方法を実践し続けていくうちに、喉がどんどん不調になってしまったので一度見てほしい理由でレッスンにお申し込みいただきました。

その不調というのは

  • 裏声が出しにくくなった・出なくなった
  • 練習していると声が掠れやすくなった
  • 体感的に歌唱時に苦しい・詰まった感が強くなった
  • 喉がジリジリ痛くなることが増えた

等など、明らかに以前よりも調子が悪くなったと感じられる状態だったようです。

そして偶然ですが、お二人共それまで主にやっていた練習が同じで、喉の不調もその練習方法により起こったことでした。

その不調を引き起こした練習方法というのが今回の記事のテーマである『ベルティング発声に関する練習』です。

ここ数年、これまでのミックスボイスに取って代わりベルティング/ベルトボイス・発声というのが流行っているようですが、それらの練習方法としてよく紹介されているものが、独学の人や、初級者・中級者の方が自主練習でやるには結構危険なものが多くあるみたいなので、ここで注意喚起とシェアしておきます。

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そもそもベルティングってなに?

まずベルティング/ベルトボイス・発声ってなに?という方もいるかもしれませんので、めちゃくちゃ簡単に説明しておくと、ベルティングというのは地声に聞こえる高音域の発声です。

厳密にはこのベルティングを定義しだした頃は女性の発声に限ってベルティング/ベルトと呼んでいたようですが、ここ最近では男女問わず、地声のように聞こえる高音発声は全てベルティングと呼ばれることが多いようです。

そして重要なのは地声のように聞こえるからといって地声をそのまま高音域まで持ち上げようとしてもベルティング発声にはなりません。

これには様々理由があるのですが、詳しく書くと非常に複雑になるので簡単にまとめると、地声発声と同じ声帯の鳴らし方では声帯の振動回数がどうしても稼げない、つまり高音域を鳴らすことはできないからということになります。

詳しく理解しなくても大丈夫です、とりあえずベルティングの練習は地声だけでは不可能だということが頭に入っていればOKです。

そして地声だけだとダメならどうしたらいいのか?もう皆さんお分かりでしょう、そう裏声です。ベルティング発声には高い練度の裏声が必須になります。

ネット上でよく紹介されているけれど、結構注意が必要なベルティング練習方法

ここで冒頭でお話した喉の調子を大きく崩してしまったクライアントさんがやっていた練習方法についてです。

その練習方法というのが所謂『プッシング法』と呼ばれる練習を利用したものです。

  1. ベルティングは裏声と違い地声の状態を保ったまま高音域を鳴らす必要がある!
  2. ということはベルティングには強い呼気圧と声門閉鎖が必要だ!
  3. なので腕で何かを押したり重いものを持とうとするときの力みを利用しよう!
  4. 3をやったままどんどん音域を広げて高音域まで鳴らしてみよう!

↑の3の部分がブッシング法と呼ばれる、主に発声・摂食・嚥下障害などの改善の際に用いられる訓練方法です。

そしてこのブッシング法を利用した練習方法というのが、ざっと調べたところ、YouTubeなどで「ベルティング」で検索したり、それに類する「強い発声」に関して検索すると、様々な動画で紹介されていました。私のレッスンに来られた2名のクライアントさんもYouTubeの動画からこのような練習方法を知り実践していたということでした。

どの動画にも一応「喉が痛くなったりする場合は練習を中止してくださいね~」という注意喚起はされていたのですが、そもそも上記のようなブッシング法を利用した練習を少しでも過剰な強度で続けてしまうと明確な症状、明らかな声の掠れや枯れ、咽頭部の痛みが出るまでに発声のバランスが大きく崩れてしまっていることがほとんどです。

それくらいブッシング法というのは誰でもほぼ間違うことなくできる上に、過緊張発声を作りやすい練習方法だということです。

私自身はレッスンをしていて、声帯萎縮を疑うくらいの状態、例えば地声を出そうにも息が漏れまくって上手く鳴らせないという場合にはブッシング法を応用した練習方法を提案することがありますが、それ以外ではほぼ利用しません。

もうちょっと発声にプレッシャーがほしいな~というときは、多少身体を力ませてやってみてくださいとお伝えすることはありますが、オンラインレッスンのような全身が見えない状態ではあまりやりたくないです。

ましてや高音域までブッシング法をしながら発声するなんて、百歩譲って、レッスンしている時であればあれこれ指示できるので、利用することもまぁ考えられなくもないですが、自主練習でしてもらうなんてどう考えてもおかしくなることは目に見えているので、絶対にやらせません。

じゃあベルティングの練習はどうすればいいんだよ!?

そう思うかもしれませんね、しかしその答えは既に書いています。

ベルティング発声には高い練度の裏声が必須になります。

ということです。

地声のような高音発声ですが、地声の機能を強める練習だけでは会得できません。上で解説したように、高い音を出す=声帯の振動回数を増やすということなので、裏声の機能が絶対に必要です。

ベルティングという文言に高音発声という意味合いが含まれているのであれば、裏声の訓練を含まないベルティングの練習なんてのはありえないということになります。

まとめ:やっぱり裏声なんだよな~

  • ブッシング法を伴ったベルティングの練習は注意が必要
  • 上手くリスク管理ができる自信がなければやらない方がいい
  • ベルティングには強固な裏声が必要
  • 安全に練習したいならまずは徹底的に裏声を鍛えよう

ということでございます。

裏声がしっかり育ってくれれば、今回紹介したような地声の機能を強く働かせる練習方法を間違ったやり方をしてしまっても、致命的な状態になるのを防いでくれます。

そして、そもそもベルティングを出したい!と思ってそれに絞った練習をしなくとも、色々と好きなように音色をコントロールできるくらいの土台ができてくるはずなので、耳にタコかもしれませんが、やっぱり徹底的に裏声練習しときましょう、というお話です。