疑問・質問フォームに来た質問への回答記事です。質問の本文はこちら↓(回答まとめページはこちら)
- いつも楽しく拝見しております。
倍音唱法に関する記事を読み、私の未熟な耳でもしっかりと倍音が聞こえ感動しました。
木田先生は倍音唱法の他にもデスボイスやホイッスルボイスなどの記事も公開していますが、やはりボイストレーナーにはこういった特殊な発声ができることは必要不可欠なのでしょうか?
私自身が今現在ボイトレレッスンを受けている身なのですが、トレーナーの方はあまり声をお手本を聞かせてくれず、レッスンのほどんどがピアの演奏だけです。
こちらからもっとお手本を聞かせてくれと要求するのも憚られるのですが、先生はどうお考えでしょうか?
- ボイストレーナーって色々な発声ができる必要がある?
- レッスンでトレーナーにもっとお手本を聞かせてくれって言っていい?
質問内容を超簡単にまとめると↑こういうことでしょうか、今回はこの2つの質問に回答していきます。
ボイストレーナーに必要な能力
質問者様が考えられているように、様々な発声ができる、つまりは高いデモンストレーション能力は確かにボイストレーナーとしては確実に必要な能力です。
ただトレーナー自身が非常に高いデモンストレーション能力があったとしても、それだけではクライアントを成長に導くことはできないでしょう。
高いデモンストレーション能力と同等かそれ以上の発声を分析・分解できる耳、聞く力も必要です。
聞いた声に対して、解剖生理的・音響的に何がどうなっていそうなのか、これがわからないと、いくら様々な発声を聞かせることができたとしても、それこからどう指導していくのかを組み立てられません。
聞いた声に対して予想・予測して、その状態からどういう方向性に導くのかを考え、それが伝わりやすいように段階的にデモンストレーションできる、基本的にはこういった流れで指導できるのが優れたボイストレーナーということになるでしょう。
なのでこれら2つの能力のどちらかが欠けていても、トレーナーとしてはまだまだ未熟ということです。偉そうに解説していますが、私自身も未だにこの2つの能力がどちらともまだまだ鍛えられる余地があると思っているので、日々研究・訓練を続けています。
自分が出せない声を指導できるか?
じゃあ高いデモンストレーション能力、つまりは様々な発声ができるという引き出しがないとボイストレーナーとして指導できないのか?トレーナー自身が出せない声は指導できないのか?といえばそんなことはありません。
上で解説した発声を聞き分ける耳さえあればクライアントを上達に導くことはできます。しかし指標となるデモンストレーションができないとなると、代わりに高いレベルでのコミュニケーション能力や伝える力が絶対に必要です。
言葉だけでクライアントの発声状態を調整させるとなると、その人の意識や感覚をかなり高いレベルで把握しておく必要がありますし『どういう伝え方で』『これを言われるとどう動くのか』ということが掌握できていないと、中々成長を促すのは難しいでしょう。
つまり確固たる狙いたい発声をデモンストレーションとして聞かせてくれないのであれば、そのトレーナーとは非常に綿密なコミュニケーションが絶対に必要になるということです。
ボイストレーナーとのコミュニケーション
今回の質問者様の質問文をみて「あちゃ~」と思ったのは
- レッスン中にお手本(デモンストレーション)を聞けていない
- なのにコミュニケーションも希薄っぽい
この2つが揃っちゃってるからですね。この状態って上で書いた成長に重要な要素が全部抜け落ちている状態になってしまってます。
なのでうちに質問をお送りいただいたことも含めて、質問者様はレッスンを受けていてもあまり思うように成長・好転していないように感じているんじゃないか?と予想します。
その理由は上記の通りですね、トレーナーの能力としても、レッスンのクオリティとしても重要なものが抜け落ちている可能性が高いからです。
Q. どこまでトレーナーに要求していい?
- レッスンをする上で成長するためなのであればバンバンあれこれ要求しましょう!
質問者様の場合、お手本を聞かせてもらわないと理解・想像できないということであれば、しっかりそれをトレーナーに伝えましょう。
そして納得できるまで何度でもお手本を聞かせてもらってください。
その要望を渋ったり、やってくれないようなトレーナーであれば、どんなに実力や実績があっても、貴方とは合わないということなので、違うトレーナーを探したほうが建設的でしょう。
理想的なのは、トレーナーの方から
- 「今貴方の発声はこうなっています」
- 「なのでこういう感じで寄せられるかやってみましょう」
という感じで、いくつかパターンを聞かせてくれるのがベストですね。まともな実力のあるトレーナーは絶対にこういったプロセスでレッスンを進めています。
- ピアノでスケールを伴奏してくれるだけ
- 歌を聞いてアドバイスされるだけ
- 知識的な事は教えてくれるけどデモンストレーションは聞かせてくれない
こういうような↑レッスンしかしてくれないのであれば、世の中にいる発声に関して悩みのある方を成長させることは難しいです。
まとめ:能力よりも相性が重要
何度かブログやXでも書いたことがありますが、ボイストレーナーの実力も重要ですが、成長に最も影響が大きいのは相性だと私自身は考えています。
もちろんトレーナーの発声能力も良い耳もあった方がいいのは確実ですが、たとえそれがトップレベルと比べると圧倒的に低いものだとしても、クライアントを必死で引き上げようともがいて、密にコミュニケーションを取ってくれるようなトレーナーであれば、牛歩ではあれど成長できるでしょう。
他方で、トレーナーの能力がどんなに高くとも、クライアントが怖気付いてしまったり遠慮してしまうようであれば、恐らく思っているより成長を見込めない状態になると思います。
せっかく安くないお金を支払ってレッスンを受講しているんですから、気になることや聞きたいことはどんどん聞きましょう。指導を受けていて納得できないことがあるなら、少し勇気は必要かもしれませんがその旨をしっかり伝えましょう。
本質的な所では『レッスンを受けるため』ではなく『成長するため』にお金を払っているということを忘れないでください。
