当ブログの記事の中でも2番目に閲覧数が多いのが音域について解説している記事なのですが、その記事では音域と音名についての解説が主で実際に歌うということと音域の関係については簡単な解説しかしていませんでした。
この記事では実際に歌える音域の確認方法と、それがわかった上で実際に歌う際の活かし方や注意点について解説していきます。
- 高い声も低い声も結構だせているはずなのに歌が上手く歌えない
- ボイストレーニングをして出せる音域は広がったけど歌への活かし方がわからない
上記のようなことでお悩みの方はぜひこの記事を参考に、ただ出せるだけの声域と歌える声域の違いについて理解を深めて、歌えるようになるための発声を練習してみてください。
声が出せる音域(声域)についての2つの捉え方
声が出せる幅、その音域を声域と呼びますが、この声域には主に2つに大別された捉え方があります。
- 生理的声域
エッジボイスk/ボーカルフライ/シュナルといった極低音域の発声や叫び声など、明確な発音や自在な状態では発声できない声の幅 - 声楽的/歌唱声域
歌唱に耐えうる(自在な音色や発音、動きや持続できる)状態で発声できる声の幅
冒頭でも紹介した記事では主に生理的声域の確認方法と、声楽的声域の違いについて解説しました。この記事では声楽的声域の確認方法と実際に歌うには?ということについて解説していきます。
声楽的声域の確認方法
前述の通り、声楽的声域は、歌う際に必要な条件を満たしていることがポイントになっています。この条件はただスケール練習で色んな発音で発声できるからクリアしている!というような単純な話ではありません。
- 音色
- 発音
- 動き
大きく分けるとこの3つの条件がクリアできているかが重要になります。ひとつづつ簡単に解説していきます。
音色の自在性
囁くように歌いたいのに金切り声や怒鳴っているような声でしか歌えないといった状態や、逆に力強く歌いたいのに小さく弱い声しか出せないとなると、それは生理的声域であって声楽的声域ではありません。
またこの音色の自在性には音量も大きく関わりがあり、上記のような状態は音量の操作ができていなとも言えます。
歌詞の内容や曲の構成・意図によって、ある程度の音色の選択肢がある状態が必要です。
発音の自在性
よく起こりがちなのは「ア」「オ」母音であれば高い声も低い声も出せる・狙った音色を作りやすい、だけど「イ」「ウ」母音になると途端にひっくり返りが多発したり、狙った音色が作りにくい・作れないという状態です。
どの母音でもある程度、統一されたクオリティで発声できる必要があります。
そして子音によっても特定の音域やフレーズで発音しにくい・思うように発声できない、ということはよく起こります。
例えば歌詞では「あ」となっているところを「は」と発音しないと発声できなかったり、濁音を発音しようとしても清音にしかならないなども、この発音の自在性に関わっています。
ボーカルスタイル的に狙ってやっているのであれば問題ありませんが、特定の音域や音色を狙うと発音ができなくなるというのは、生理的声域と声楽的声域を分ける大きな要素です。
動きの自在性
高い音がスタッカートでしか出せない・特定の音域では声を持続させることはできても動き(ビブラートやコブシ等)が付けられない状態だと、思うように歌えないでしょう。
狙った箇所で声を伸ばすと意図せず動きが付いてしまう(勝手に揺れる・震える)という状態になってしまう場合も、その声域は声楽的声域とは呼べないでしょう。
声楽的声域と呼べる条件のまとめ
- どの母音でも同じクオリティで発声できる
- どの子音でも音高やフレーズに関わらず発音できる
- 幅広い音域で思うように音色を変化できる
- 幅広い音域で声を長く持続させたり動きがつけられる
上記のような条件を、まずはスケール練習で様々な音域や発音に加えて動きや音色の指定を加えながら練習していきます。
スケール練習に関する記事でも書いていますが、当たり前にスケール練習でできないことは曲を歌うときにもできないので、まずは簡単な音型から訓練しはじめます。
次に生理的音域を声楽的声域にするための方法、つまり生理的声域の発声を歌に活かせるようにするための練習方法について解説します。
声楽的声域を広げるための練習方法
これまでこのブログで公開している記事でも数多く声楽的声域を広げるための練習方法を解説していますが、ここでは最もシンプルでわかりやすい方法を解説します。
条件を絞って発声練習・歌唱してみる
前述のような声楽的声域を呼べる条件を全て満たした状態を作ろうとするのはかなり難易度が高いです。なのでまずは「この条件はクリアできているな」と思えるものを絞って発声練習をしてみましょう。
- 音域
- 母音・子音
- スケールの種類と向き(上昇 or 下降)
- 動きの有無
まずは上記のような条件を明確にして、その中からどれだったら思ったとおりにコントロールできるのか?ということを考えて練習をしてみましょう。
- G4の高さを
- 「オ」母音で
- 単音で
- 伸ばしながらビブラートをかける
めちゃくちゃ初歩的な例だと上記のような条件でもOKです。
これだと単純にG4を「オ」母音でサステインさせているだけですが、これらが狙ってできていれば訓練としての価値は十分にあります。
上手くできるものは条件を増やした上で細かく指定しながら練習したり、苦手なものは条件を緩めたり、もしくは条件をなくし意識的に操作できる条件だけにした練習も効果的です。
このような方法でまずは『この練習であれば自在性の高い発声ができる』という状態を作るというのが重要です。
母音唱法
上記のような練習方法で、様々なスケールを指定した条件がクリアできた状態で発声できるようになってきたら、徐々に曲を歌う練習をする必要があります。
スケールよりも曲のフレーズの方が圧倒的に難しいため、曲を歌う練習でも条件指定が重要になってきます。今回は大昔から存在している練習方法である母音唱法について解説します。
母音唱法とは書いてあるとおりそのままの意味で『母音だけで歌うこと』です。「うみは ひろいな おおきいな」という歌詞を「ういあ いおいあ おおいいあ」という風に歌うということです。
発声訓練の段階で各母音の発声が上手くできるようになっていたら、この母音唱法そのもので練習するのもあり(子音に関する条件がごっそりなくなるので)ですが、恐らく多くの方は得意な鳴らしやすい母音と、そうでない母音がでてきているはずです。
なので母音が統一できるまでは、歌詞を全て母音に変換するのではなく、歌詞を全て一つの母音で歌うという練習をしてみましょう。
- ひとつの母音で歌う
幅広い音域で鳴らしやすい母音を選択する - 母音の音色を統一する
地声/裏声的や暗い/明るいといった音色を決める - 動きを統一する
なるべくビブラートやコブシをつけるのか、ストレートを維持するのか決める
上記のような条件をあれこれと指定し、思うように歌える状態を探して練習してみてください。
まとめ:なんでもできる声を広げる
あれこれと解説してきましたが、とにかく「地道なボイストレーニングを続けて思うように発声できる状態を作っていきましょう」という至極真っ当なところに帰結していきます笑
ボイストレーニングをして発声の自在性が高くなっているはずなのに、歌うときには全然変化を感じない!というときは大抵ボイストレーニングができていないというのが答えです。
ボイストレーニングによって生理的声域を広げる段階もたしかに存在しますが、いつまでも声楽的声域が広がらない、もしくは声楽的声域が全く無いというのは問題です。
2つの声域がバランスよく広がるのがボイストレーニングなので、今回解説したことでお悩みの場合は、ぜひお気軽に体験レッスンに起こしください~♪