ボイストレーニングの効果を発揮するためには主に2つの重要な条件があります。
- 今必要な練習方法の選択
- 効果がでる方法で練習する
めちゃくちゃ単純化していますが上記の2つがクリアできているかどうかでボイストレーニングの効果が大きく変わります。
このブログではどちらの条件に関する内容も解説していますが、今回は2つめの『練習の仕方』に関する内容、その中でも多くの人が避けたがる失敗/ミスに関する内容です。
練習方法の選択も、そのやり方も間違っていないはずなのに、なぜか思ったように成長を感じられないという場合、この記事で解説することをぜひご自分の練習の仕方と比較してみてください。
脳が処理できないようなスピードで練習をこなしていないか?
練習している中で『なにを意識して』『どんな声を出したくて』といった目標・理想を全く考えずに、恐らく正しいであろう状態や声を狙って、なんとなく/とりあえずで練習していないでしょうか?
- どんな状態を目指して
- なにを意識して
- どういう状態になっているのか
これらを全く意識せず、とりあえずやってくださいとトレーナーに言われた練習方法や、今の自分に効果的であろう練習方法をやっているだけの人がかなり多い印象です。
加えて日々の練習として課しているメニューをとりあえずこなすために、一つひとつの練習の結果を精査しないうちにメニューを次々と変えてしまう、スピード重視の練習をしている人も多いです。
こういう練習の仕方をしてしまうと、脳はそれぞれの練習で
- 何をやっているのか?
- 何を重視しているのか?
- 何がクリアできていればいいのか?
上記のような条件を全く処理できていないため、新たに使いたい筋肉への司令がだせるようになることも、強化したい神経回路を狙って使うこともできないため、練習をどれだけ続けても効果がでない状態になります。
なぜそういう練習方法になるのか?
原因の1つは時間的な制約があります。限られた時間の中でなんとか練習しようと思うと、細かいことは気にしていられず、とりあえず声だしときゃいいだろ!となりがちです。
しかし、短い時間であっても特定の効果を狙う練習だけをやれば丁寧にできるはずなのに、大抵そうはならずに短い時間の中であれこれメニューを変えて練習してしまいます。
こうなってしまう要因はミスをすることを嫌っているからです。
- 時間内でおこなう練習を無駄にしたくない
- なのでミスしたくない
- ミスしたとしてもその状態から目をそらす
上記のような思考は、練習時間としてとれる時間が長かろうが短かろうが、時間を無駄にしたくない、少しでも効果のあることをやっていると信じたい人のほとんどに当てはまります。
このような練習は答え合わせをせずに問題集を解き続けているのと同じです。間違った部分が判明し、それがなぜ間違っているのかを精査して、次は間違わないようにする、こういった勉強では当たり前の流れが、ボイストレーニングやその他スキル開発の際には無視されがちです。
重要なのはミスそのもの、つまりできなかったという事実ではありません。
『なぜそうなるのか』『どうすればできるようになる/正解に少しでも近づけるのか』ということだけが重要です。
「あーまたできなかった・・・まぁ続けるか・・・」とまともに検証もせずにただただ声を出しているようなのはボイストレーニングではありません。
真面目さゆえに深刻に捉えてしまう
ミスをしたくない、ミスから目をそらすというのも、時間的な制約によるところが大きく、そもそも練習すること自体を適当に捕らえていたり、不真面目だからそうしているというのはあまり多くありません。
やらなきゃ変わらないということは、多くの人が幼い頃から経験しているからです。
それでもミスをなるべく遠ざけようとするのは
- ミスをいちいち深刻に捉えてしまう
- 深刻になり考えていると行動が止まってしまう
- なるべく元凶であるミスから距離をとりたい
- 「まぁいいか」と次々に思考や行動を変える
上記のような思考の流れからです。ミスしてもあまり考えずとりあえずやっておこうという状態になります。
しかしスキルを伸ばすのに重要なのは、ミスを深刻に捉えるのではなく俯瞰で捉えることです。
理想と現実の違いを客観的に検証する
「あれ・・・なんかお手本と違う・・・」とか「全然できない・・・」という漠然とした考えやネガティブな思考はこれっぽっちも必要ありません。
- 理想の状態をよく観察する
- それを真似するように行動する
- 行動の結果と理想を比べる
- 次の行動で変化させることを決める
必要なのは上記のような思考と行動の仕方です。これをぐるぐるぐるぐる何度も何度も繰り返すことで、新たなスキルを身体に染み込ませていくことが重要です。
まとめ:ミスではなく理想の状態に目を向ける
レッスンでも自主練習でも上手くいかない時はいつでもミスにばかり目がいっています。
「◯◯になってはダメ」という思考ばかりで、どうなれば理想の状態なのか?が頭から抜けていることが非常に多いです。
レッスンの中でもなるべく避けてほしい状態は伝えられると思いますし、書籍やネットでも練習方法を解説している中には「こうなるとミス」ということはあるでしょう。
ただ実際に練習する際にはミスになる条件ではなく理想の状態をイメージするべきです。例えばこの記事で紹介している裏声/ヘッドボイスを練習をしているときに
- 体感的に重たくなってはダメ
- 音色が明るくなりすぎたらダメ
- 喉頭が上がり過ぎたらダメ
- 音の立ち上がりで引っかかったらダメ
上記のような失敗条件をあれこれ考えながら発声するのではなく、目標として設定した声の外したくない/理想の声に近づけるための要素
- 狙っている音高
- 地声とは明らかに違う感覚
- 暗い音色/母音
- 低めの喉頭の位置
等など、目を向けるのはこちらです。これらのどれは達成できていて、どれが達成できていないのか、練習で意識するのはこれだけです。
達成できていない要素がたくさんあったしても、必要なのは「できなかった・・・」という後悔ではなく、次に向けて何を変えて行動するのか?という改善案です。
出しちゃダメな声もなければ、やったらダメな失敗もないです、常にこの思考で練習していきましょう!