質問箱に頂いた内容に回答していきます。今回は要約するとこんな感じ↓の内容です。
- 特定の練習をしすぎたら地声も裏声も息が漏れて掠れてしまうようになってしまった
- 病院で診てもらうと声帯の後ろ側が閉じられていないと診断された
- 改善するには?
こういった質問に回答していきますが、分からないことが多すぎるので納得の行く回答にはならないと思います、あくまで参考程度とお考えください。
また質問者以外でも、こういった息漏れや声の掠れについてお悩みの方も、いくつか効果のあるかもしれない方法を紹介するので、お試しください。
まず最初にこの質問者の方にお伝えしたいことから書いていきます。
ネット上で質問なんてしてる場合じゃないです
声帯の後ろ側が全く閉じてないってかなり重症
恐らく質問文の通りに診断されたのであれば、口か鼻からスコープを突っ込んで、実際に声帯の状態を見たのでしょう。
そして声帯の後ろ側が全く閉じられてないという診断をされたのであれば、結構重症です。そしてそれが数年続いてるっていうのも結構ヤバイです。
喋りづらさを感じているということからも、巷にあふれている簡単なボイストレーニングのエクササイズ云々ではどうにもならないという可能性が非常に高いため、耳鼻咽喉科での治療や言語聴覚療法など医療機関で診断・治療を受けるべきです。
はっきり言って、そういった診断をされ数年経った今、ネット上の一個人ボイストレーナーに相談するような内容の悩みじゃないです( ;◉◞౪◟◉)
ここからは声帯が上手く閉じれなくなっている方向けの訓練方法をいくつか挙げますが、恐らく劇的に改善はしないと思います、まずそもそもどの程度の症状なのか、何が出来て何が出来ないのかも分からないので、大雑把なアドバイスしかできません。その点ご了承ください。
息を止めてみる
パターン1. 普通に息を止める、重いものを持つ、壁を強く押す
こういった動作、つまりは全身に力を込めると声帯はきっちり閉鎖されます、これは声を出す出さないに関わらず生理的に必ず起こることです、これを利用して閉鎖する筋肉たちの動きを良くしてやる必要があります。
これをやっている時の身体や喉の感覚をよく覚えておいてください、声にしようとした瞬間その感覚を一気に手放してしまうことが多いのですが、それを感じたまま口を開かず「ん」と言ってみましょう。
多分こんな感じで苦しそうな音が出ると思います、注意するポイントとして頑張って声にしようとしないでください。
これら↑の動作をしていれば声帯は自然としっかりと閉鎖しています、それ以上に力をかけても意味はないので、閉鎖するぞ!と考えて喉に余計なお仕事を増やさないようにしてください。
音量注意!
こんな感じの音すら出ないようであれば、まずは最初に書いたように息を止めたり身体に力が入っている状態の喉の感覚をしっかり覚えるというところまでをやってください。
そのうちその感覚を持ったまま少しづつ音が出せるようになると思います。
パターン2. 息を瞬間的に止める
次は口を少し開けてみて、この記事↑のパターン1のような、ハッと息を瞬間的に止めるという訓練です。
音量注意!
これくらいの音量やテンション感でできないようであれば、もっと小さく弱めでもいいので身体(特に腹部)にテンションを感じながら息を止められている状態が出来るか試してみてください。
このトレーニングも最初の内は、パターン1と同様にある程度身体に力を込めてテンションを感じてないと上手く出来ていない可能性が高いので、パターン1の『重いものを持つ』『壁を押す』という動作を合わせてやってもOKです。
吸気発声をやってみる
かなり難しいとは思いますが・・・
この記事↑の『2. 吸気発声でシュナル/ボーカルフライから裏声に移行』を参考にしてやってみると何か掴めるかもしれません。
ちなみにこの参考記事では裏声の音域まで繋げてますが、地声の音域まででOKです。出せそうなら裏声まで出してもいいですが、恐らくただ息をたくさん吸うだけの結果になるでしょう。
ここでも最初に書いた「息を止める」という感覚や意識はそのままに持っておいたほうが成功する確立は高いと思います。
音量注意!
こんな感じでゲップみたいな音が鳴れば、閉鎖しながら発声できているという状態です。
ただ吸気発声というのは今回動かしたい声帯を閉鎖させる筋肉じゃなく、声帯を開かせる方の筋肉が強く働くので、どうしても声が掠れて息が漏れるという方には難しいかもしれません。
ただ普段発声している体感や意識が吸気発声の場合ガラッと変わることが多いので、そのおかげで余計な動作が起こらずスルッと上手く出せる場合もあるので、試してみてください。
難しいようであれば、まずは最初の『息を止める』というパターンをやっておいてあげればOKです。
息を減らす(小さい声で発声する)
頑張って閉鎖させる!→ 閉鎖させると同時に息も多くしちゃう → 余計声帯開いちゃう
この負のループに陥ってしまっているパターンの方がクライアントさんの中にも結構いらっしゃいました。今回の質問者の方がこのパターンかどうかは分かりませんが、恐らく程度の差はあれどこういった状態にはなっていると思います。
なので息を多く吹かないというのが非常に重要になってきます、それをやってしまった段階で声帯は閉じることをやめてしまいますので、いつまで経っても声帯を閉鎖する筋肉が動いてくれないということになります。
ここまで書いたある程度身体にはテンションをかけて負担を感じている状態を維持しながらも、大きな声にしようとせず、ほんの小さな声の鳴りを作るというのがポイントです。
ここまでに挙げた参考音源も非常に小さな音です、それでも声帯を閉鎖させる筋肉はしっかり動いているので、まずはその程度の負荷からトレーニングを始めます。
いきなり大音量で地声の練習をしようとしたって無理です、音を大きく鳴らそうとした段階で肺から供給される息の量も決まります、そしてその量は脆弱な披裂筋群(声帯を閉鎖する方向に動く筋肉たち)が明らかに耐えられない息の量とスピードです、そうなると一気に弛緩して息漏れの音だけになります。
これを繰り返しても閉鎖する力は鍛えられません、少ない息の量でもいいので、しっかり受け止めて音を鳴らすという状態とその感覚を覚える必要があります。
まとめ:よくあるボイストレーニングのメニューでは対処できない
質問文に書いてある状態の通りなのであれば、SLSやらアンザッツの何番やらというボイストレーニングのメニューでは対処しきれません。
これは質問者の方だけではなく、喋り声にも息漏れや掠れが出ているという場合、そもそもネット上によく書かれているようなボイストレーニングの方法ではどうしようもない、その手前の段階の訓練が必要であるという事が多いです。
どうしてか?書かれてあるトレーニング方法自体が実践・真似できないからです、つまり質問者の方の場合もSLSやアンザッツのトレーニングをやったけど効果がないと書かれていましたが、効果がないのではなくきちんと実践できていないんです。
はっきりいって一般的な声帯を閉鎖する力が弱いというだけであれば、ちゃんとしたアンザッツの1番と5番をやっておけば確実に改善します。ちゃんと真似できてるけど改善しないということはほぼありえません。改善しないならそもそもちゃんと実践できてない、出来ないのは現状の状態からはあまりにも遠いトレーニングであるからということです。
なのでここに書かれたような一見「誰でもできそうじゃない?」「これくらいなら別にできるんだけど?」と思うかもしれないようなトレーニングからしっかりやってみてください。
というか質問者の方には何度も言いますが、ネット上であれこれ調べたり質問してる場合じゃないです。現在の状態を然るべき医療機関で診断してもらい、その後でボイストレーニングのレッスンや言語聴覚士の指導を受けるべきでしょう。
何年も息が漏れて声が掠れるという状態が続いていたのであれば、それを改善するのにも同じ年数かそれ以上かかる可能性も非常に高いですが、声帯とは死ぬまでお付き合いしていくわけなので、早めに改善してあげてください。