予約/お問合わせをしたのに返信が届かない場合

ビジネスパーソンのためのボイストレーニング|会話に影響する滑舌と側音化構音

参考音源付き記事
PexelsでのJopwellによる写真: https://www.pexels.com/ja-jp/photo/1325761/

今年に入ってビジネスパーソンのクライアント様が『喋り声』『スピーチのための発声』を改善/開発したいという目的でレッスンに来られることが非常に多くなってきました。

そしてほぼ全てのクライアント様が

  1. 説得力のある声が出せるようになりたい
  2. 人が多い環境でも通る声になりたい
  3. 喋る時間が長いから効率的な喋り声になりたい
  4. よく聞き返される/言葉が伝わりにくいから明瞭な声になりたい

上記のようなことを目標にされているのですが、1・2・3は発声を改善するボイストレーニングをすることで解決することが多いです。

しかし4に関しては発声を改善して声自体が明瞭になったとしても「よく聞き返される/言葉が伝わりにくい」という問題は解決しない可能性が非常に高いです。これは発声ではなく主に発音の問題だからです。

加えて私がレッスンをしていて遭遇する発音に関わる問題は、滑舌とそれに関わる側音化構音という障害が原因であることも多いです。

スポンサーリンク

声が暗い/低いから言葉が伝わりにくい?

時々「声が低い/暗いからよく会話の中で聞きかえされる」とお悩みで、ボイストレーニングをすることで「声を高く/明るくしたい」と希望される方がいらっしゃいます。

しかし実際には言葉が伝わりにくいのは声の音色自体が原因ではなく、暗い/低い声を作る喉の形状によって発音も合わせて不明瞭になっているのが主な原因です。

声が低い人の喋り声によくある特徴

声が低い場合、当たり前に声道・共鳴腔が広い/声帯も長いということなので、喋るにしても長い声帯を振動させる必要があるため声帯や声道・共鳴腔が小さい人と比べると、喋るという行為自体に少し労力が必要になります。

なので大きくハキハキ喋ろうとすると喉が疲労しやすいという傾向もあり、常日頃からなるべく省エネで、つまり声を鳴らさず小さめに発声している方が多い印象です。

こうなると声が低く発音も明瞭じゃないというのに加えて声自体も小さいということになっているため、喋り声が伝わりにくいというのは当たり前です。

では発音を明瞭にハキハキ喋ろう、滑舌だな、じゃ滑舌を良くするための練習をしよう!と考えるのですが・・・

滑舌が悪い=早口言葉が言えない?

  • 早口言葉が言えない、だから滑舌が悪い
  • 滑舌が悪い、だから早口言葉で練習する

上記のように考えている方が結構多くいらっしゃいます。

そもそも早口言葉というのは、その文の構成自体が日本語的に言いにくい、舌の動きが連続しにくいように作られているものなので、それが言えない/言いにくいということが滑舌に直結するわけではありません。

早口言葉が言えないと困る職業はほんの一握り

声優やアナウンサーなどの職業やそれらを目指しているような方であれば、日常生活ではありえないくらい速く言葉を紡ぐことを求められることがあるかもしれませんが、そうではない、つまり一般的な社会生活を送る中では早口言葉が言えないからといって問題になるような場面はありません。

また発音に関する大きな問題がない状態であれば、早口言葉は練習すればある程度は言えるようになります。しかしその事自体によって喋るときの発音が明瞭になるわけではないです、単純に“早口言葉が”上手くなります。

そして早口言葉が言えない、だから滑舌が悪いなんて単純な原因ではなくもっと大きな喉や舌の癖・固着・障害があるから会話の際にトラブルが起こりがちというケースがあります。

それが側音化構音そくおんかこうおんと呼ばれる機能性構音障害の一種です。明確な原因はないけれど構音、つまり発音する際に何らかの誤りが起きてしまう状態です。

滑舌に直結する側音化構音とは?

  • 「い」の段が発音しにくい/不明瞭になる
    • 「し」を発音しているのに「ひ」っぽく聞こえる
    • 「ち」を発音しているのに「き」っぽく聞こえる
    • 「ひ」や「き」を発音するとこもって不明瞭に聞こえる

上記以外にも沢山症状はありますが、主に「い」段の発音の際に明瞭に聞こえないというのが側音化構音です。側音化という文字の通り、本来は舌の先や真ん中から空気が流れ形成される音が、舌の横から空気が漏れてしまい音が不明瞭になるという状態です。

実際にはどんな発音になるのか?少し大げさですが普通の発音の後に側音化構音っぽく発音した音源を用意してみましたので、一度聞いてみてください。

側音化構音の発音例

この参考音源くらい明確に発音に異常がある人はそんなに多くないのかもしれませんが、これに準ずる状態になっている人はかなり多い印象です。

テレビにでている著名人やYouTuberの方でもこの側音化構音の方は多くいらっしゃるので、これまで側音化構音という障害を知らなかった方は、漠然と「この人滑舌悪いな~」と感じていたとしたら、ほとんどの場合でこの側音化構音だからそう感じたということだと考えられます。

社会生活の中では面と向かって「い段の発音が聞き取りにくいです」なんてことは言われないので「滑舌が悪いとは言われたことがあるけれど、明確にどういう発音になっているのかは全く知らなかった」という方がほとんどです。

こういった発音の異常が起こっていて日常会話の中で上手く言葉が伝わらないという問題を抱えている方が非常に多い印象です。私がレッスンさせていただいているクライアント様の中でも、歌に関するボイストレーニングではなく、喋り声を改善するのが目的という、割合としては少ない人数の中にも結構な数いらっしゃいます。

側音化構音の改善方法

本来こういった構音障害と呼ばれるような症状を改善する場合は言語聴覚士と呼ばれる専門家の評価・指導が必要になります。

なので私のようなボイストレーナーが行うトレーニングはあくまで言語聴覚士による評価と指導を受けたその後の話なので、ここまでこの記事を読んで自分自身がこの「側音化構音になってるわ・・・」と思った方は、まず言語聴覚士に声を聞いてもらうことをオススメします。

この記事もビジネスパーソン向けた「発声と発音の問題を切り分けましょうね~」ということを伝えたいだけのなので、側音化構音の改善方法はメインテーマではありません。

ただここまで読んでいただいて後は自分で調べて勉強してね~というのも不親切極まりないので、次からボイストレーニングの範囲でできる側音化構音などの発音に関わる癖や固着を少しでも解せる可能性のある練習方法を解説していきます。

舌の適切な使い方を練習をする

そもそも側音化構音になってしまう原因は舌が緊張しすぎている/舌の筋力不足だとされています。いやどっちなんだよ!とツッコみたくなりますが、このあたりは明確にされておらず、論文や書籍によって書かれたいることが違ったりします。

ですが、どちらにせよ舌を適切に使えてないから起こっているということは確実なので、ここに関わる練習をすれば改善に近づくと予想されます。

歯擦音で舌の使い方を観察してみる

歯擦音というのは上記の音源の最初に鳴らしている歯と歯の間を息が通過する際に鳴る音のことです。側音化構音の場合この歯擦音が上手く鳴らないことが多いです。

ただ単純にこの歯擦音が鳴らせないということではなく、発音しようとした瞬間に舌が力みすぎる/弛緩してしまうということが起きて、舌の横側から空気が漏れ出すというパターンが多いです。

なのでまずは側音化が起こりにくい「あ」母音を使って、舌の動きを感じ取ってみましょう。

  1. 正しく舌を上顎と上の歯の付け根部分に当てて歯擦音を鳴らす
  2. なるべく状態を維持したまま「あ」を言うつもりで発音する

この発音が問題なくできたら、次は「い」母音に変更してみましょう。

「し」を発音する際の歯擦音は「さ」とは違い舌先が上顎側には付きません、ほとんどの方が下の歯の付け根辺りに軽く付く程度でしょう。

この動作を意識して、なるべく「さ」を発音するときのように大げさに歯擦音を鳴らせるかどうか?というのをまずはやってみましょう。そこからスムーズになるべく舌を動かさずに「い」母音に移行できるように練習してみてください。

「た」を発音して舌の動きを改善する

「た」を発音する際の「t」の子音は舌に適度な緊張を作らないと鳴らせません。なのでこの発音を側音化構音を改善する練習として取り入れます。

  • 舌の筋力が弱い場合
    • 「t」の子音を強調して発音することで舌の適度な緊張を促す
  • 舌が緊張しすぎている場合
    • 「t」の子音を連続で早く発音することで余計な緊張を抜く

上記のような目的で「た」の発音を利用します。

自分は側音化構音っぽいけど舌の筋力が弱いのか過剰なのかわからないという場合は、単純にどちらもやってみて難しい方を優先して練習してみてください。

多くの場合、明確に舌の筋力だけが問題である場合は少なく、特定の母音・子音を発音するときだけ症状が現れたり言葉としての繋がりによっても症状が出たり出なかったりすることもよくあるので、ひとまずは体感的に「やりにくい」とか「難しい」と感じるものを練習しておけばOKです。

まとめ:喋り声に関しては“違和感”は大敵

今回取り上げている側音化構音に関わらず、様々ある構音障害を持つ人は約80万人いると推測されています。結構な数ですよね、つまり約150人に1人の割合で何らかの発音に関わる問題を持つ人がいるということです。

喋り声に関する印象は好き嫌いではなく違和感があるかないか?に左右されると考えています。

『好きな喋り声』は無条件に好きになるし『明確に嫌いな喋り声』と思うのは、その相手の人のパーソナルな部分や、それまでの経験で培われた印象を含まない場合は、恐らくあまり感じないはずです。

他方で好きでも嫌いでもない、つまりは多くの人が当てはまる状態の場合、今回とり上げた発音だったり特定の喋り方・癖などによって違和感を与えてしまうと、その印象が強く植え付けられます。

  • 会話する機会が多い
  • スピーチや講演など多数に向けて喋る機会が多い
  • 会話によってこちらの印象を操作したい

上記のような場合には、今回取り上げた発音や喋る際の声の操作を訓練するのは非常に効果的だと考えられます。

この記事で自分はもしかしたら側音化構音かもしれないと思った場合、ひとまず信頼できる言語聴覚士に声を聞いたもらいましょう。ボイストレーナーに相談したとしても、まともなトレーナーであれば症状が起きているかの指摘自体はできると思いますが、やはり最初は言語聴覚士に相談する方が安心です。

その後の改善に向けた練習に関してはボイストレーナーでもお手伝いできることがあります。私はこれまでのレッスンで側音化構音の方をほぼ症状が聞き取れないレベルまで改善した経験が少ないながらもありますので、発声訓練と合わせて練習したいという場合はお気軽にお問い合わせください。

無料オンライン発声相談のご案内
これまで低価格で行っていた『初回体験レッスン』を廃止し、通信テストを含めた『無料オンライン発声相談』…