疑問・質問フォームに来た質問への回答記事です。質問の本文はこちら↓(回答まとめページはこちら)
- とても勉強になるブログ記事ありがとうございます。現在オンラインのボイトレレッスンを受講している20代後半の男です。
現在の声の状態は、習っている先生からミックスボイスはできているから、これから徐々に強くしていく、ベルト化していくというレベルなのですが、その方法が手応えがなく相談させていただきたいです。
ミックスボイスを強くしていくには主に響きを変える、口腔内を広げて硬口蓋に響きを集めて増幅するようにと指導されています。ただこの方法で発声が強くなるイメージが全然できません。
他にも仮声帯?を使うことも指導されていますが、これも上手く現在の声に繋げられるのか疑問です。
木田さんのブログでもミックスボイスを強くする方法は書かれていますが、響きを増幅するということには全く言及されていないため、何か間違っているのか不安です。
長文失礼しました。何かアドバイスいただきたいです。
- ミックスボイスを強く出すには響きを変えると教えられたけど、できる気がしない
- この↑方法で強くなるのか?
質問内容を簡単にまとめるとこんな感じでしょうか。
これまでもミックスボイスを強くするための解説はいくつか記事として公開していますが、今回は響きや響かせ方で強くできるのか?という部分にフォーカスしていこうと思います。
ミックスボイスを強くするには共鳴を増やす?
これまでに公開しているミックスボイスに関する記事でも書いていますが、基本的に発声を強くする、つまり強度を上げる際に共鳴云々にどうにかするというのは効果的ではありません。
母音・子音を利用し、その発音をする際の動作・作用を利用することによって声帯振動のさせ方をコントロールするということは、発声を強くしていく方法として定石だったりしますが、単純な
- 特定の場所に声を当てる
- 響きを増すことで声を強くする
こういった訓練・指導方法では、めちゃくちゃ限られた状態の人しか効果は出ないでしょう。
発音を利用してのミックスボイス開発に関しても、そもそもそれらの要素を分解していき何をどうさせたいのか?という部分にフォーカスすると声帯をどう振動させられるか?ということに集約されていきます。
どんなに響きが強くなる・増幅されるような共鳴腔・声道を作れたとしても、声帯で鳴らしている原音自体が弱く小さいものであれば声が強くなることはありません。
声帯振動を効率的にする・強度を高めるために響かせ方や響く場所を探るということはよくありますが、響きを変えることで声帯振動を直接的に操作するということはできません。
つまり声の操作というのは、どこまでいっても声帯をどのように接触・振動させられるかということであって、『◯◯に声を当てるように!』とか『◯◯に響きを強く感じるからこれは◯◯ボイスです!』ではないというこです。
響き→声帯振動ではない
- 共鳴腔を◯◯にすると声帯振動が□□になりやすいです
- 共鳴腔を◯◯にして発声すると△△に響きが集まる・強くなる感じがするはずです
- なので△△で響かせるように発声してみましょう
発声訓練で行われるのはこういった↑流れでの指導です。
- △△で響かせると声帯振動が□□になります
- なので△△で響かせるように発声してみましょう
質問者の方がされている指導はこう↑なっている感じでしょうか。本来発声を変える際に重要な要素がかなり抜け落ちてしまっている可能性が高いということです。
というか未だに指導パターン2で考えていたり、動画で解説したりブログ記事を書いているボイストレーナーも多いのですが、その内容・方法が刺さって状態が好転する人がいるのであればまぁ悪くはないのかもしれませんが、大抵はそれだけだと発声も思考もめちゃくちゃにこんがらがるパターンが非常に多いです。
実際に私のレッスンを受講されたクライアントさんの中でも、指導パターン2で指導を受けてきた・練習を続けてきた方の多くが「響きを強く!もっと響かせて!」となってしまい、喉頭が過剰に上がった状態になり動かせない、声質も高い倍音だけが多く細く甲高い声質しか出せないといった状態になってしまっていることがめちゃくちゃに多かったです。
強くするなら狭くする
質問文を読んでいて私が最も「ん?なんで?」と思ったのは
- 口腔内を広げて硬口蓋に響きを集めて増幅するようにと指導されています。
ここですね、質問者さんも「ただこの方法で発声が強くなるイメージが全然できません」と書かれています。私としては「そらそうでしょうねぇ・・・」って感じです。
なぜならミックスボイスを強くしていく過程でも、ベルティングを探る過程でも、共鳴腔・声道の一部を狭窄し狭くすることで声帯の接触率を高めたり、歌声フォルマントと呼ばれる所謂「鳴りが強く響いて聴こえる周波数帯域」を強く出すように促すことはよくありますが、質問文にある「口腔内を広げて硬口蓋に響きを集めて」という指導は、それらの逆の動作になりやすいからです。
口腔内を広げるということが喉頭を降下させることに繋がるので、もしかしたら喉頭を降下させやすい母音・子音の組み合わせで発音し、声門上下の圧力を操作することで狙った声帯の接触率を狙っているのかもしれませんが、だったら「口腔内を広げて響きを集める」という指導ではその意図は全く伝わらないでしょう。実際質問者さんも全然イメージできないと仰られていますし。
仮声帯を関わらせた強いミックスボイス
ここに関してもどのように説明・指導されているのかが分からないので、とりあえずボイストレーニングの一般論として解説しますが、確かに仮声帯が狙った声帯振動をさせやすくするためのサポートとして働くことはあるとされていますが、私個人としては明確に「今仮声帯がサポートしてくれている!」と感じることはあまりないです。
身体全体でちょうど良い感じの圧迫感・緊張感で強く声が鳴っているというのは感知できますが、それが仮声帯のサポートによるものなのかが明確ではないという感じです。恐らく仮声帯も良い感じに支えてくれているとは思うのですが、それを科学的に検証したことはないです。
ですが仮声帯が発声に関わってくれていると様々なメリットがあることは判明しているので、そういった発声を訓練するのは非常に有用でしょう。
ただそれがミックスボイスを強くする、ベルティングにしていくということに直接良い影響を及ぼすかどうかは分かりません。なぜかというと、もしかしたら仮声帯を関わらせる発声練習をすることで余計な部分まで緊張させてしまい、そもそも狙った声帯振動を邪魔してしまうということも全然ありえるからです。

まとめ:本当のところはわかりません・・・
ということでここまで頂いた質問に対して色々と書いてきましたが、実際のところ質問者さんにされている指導の全容は私には分かりません。
短い質問文から察するにということでしかないので、細かい部分のレッスンの内容や進め方に関しては、以前記事にもしましたが、せっかいお金払ってレッスン受けてるんだから、どんどん質問して「どういう意図でこの練習してるんですか?」と聞いてみましょう。

少しの説明で理解できないのであれば、1回のレッスン時間丸々使って、質問者さんの現状と課題、それを改善していく方法など、詳しく説明してくださいと頼んでもいいと思います。自分自身が「なるほどぉ~」と納得できるまで、知らないことや理解できない部分はトレーナーとすり合わせましょう。
トレーナーとしては「これを説明するのはあれも・・・これも説明が必要だな・・・あっ・・・あれもか・・・」みたいな感じで、結構無限にお教えすべきことが出てくるので大変ですが、それを上手くわかりやすくまとめてご説明するのもトレーナーの仕事なので、遠慮せず伝えましょう!
