これまでボイストレーニングの初期段階で練習しておいてほしい、あまり喉が柔軟且つ自在に動かないという人でも真似できそうと考えた発声をいくつか解説してきました。
しかし実際にそれらを読んで練習していたという方がレッスンに来られるのですが、ほぼ90%以上の方が上手く再現できていませんでした。
このズレは、自分の声をお手本と比較できるだけの耳が育っていないということと、やはり真似しようにも喉が思うように動いてくれないというのが主な原因でしょう。
なので今回は細かい部分は抜きにして、とりあえず『最低限支えられた発声』を探してみましょうという記事です。
よくボイストレーニングでは聞くことが多いかもしれません『支えられた』という文言の意味に関しても、私の認識で解説していきます。
支えられた発声とは?
声楽のトレーニングではよく『支え』という文言が登場します。これにはトレーナーやメソッド毎に解釈が大きく違うことがありますが、基本的には『安定した発声状態の際に感じる身体の力みや抵抗感』という意味で使われることが多いです。
私は基本的には同じような考え方ですが、もっとシンプル且つ優しい定義づけしています。
- 不規則な揺れが起こらない状態で発声を10秒以上持続することができる
- ①をクリアした上で、75~85dB程度の音量(口元から約20cm程度離した騒音計で測定)
上記の条件がクリアできていたら『最低限支えられた発声』になっているとしています。これは私が勝手に定義しているだけなので、一般的な『支え』の定義とは異なるでしょう。
意外と簡単そうに見えますが、実際はどうでしょうか?
音高はどこでもいいです、喋っている声の高さでもいいですし、裏声の音域で出してもOKです。発音も発しやすい子音を付けてもいいですし、母音もやりやすいのを探ってみてください。
自分の中でこれならできそうと思ったら、一度録音しながらチャレンジしてみてください。
意外とできない人が多い
これらはあくまで参考の音源です。音色や高さ、母音などは各自違うこともあると思いますが、こんな感じでそこそこ安定して発声できていますか?
安定して持続させようとしたら音量が著しく下がったり(70dB以下になる)、音量も揺れ・ブレは起こらないけど10秒間伸ばせないといった状態も『最低限の支えがない』ということになります。
この発声状態が難なく再現出来るという場合は、このブログにある練習方法にどんどんチャレンジしていってください。
条件が全くクリアできない、もしくは惜しい感じだけどギリギリクリアできてる・・・?できない・・・?みたいな方は、まずこの記事を読んで最低限支えられた発声ができるように訓練してみてください。
喋り声の傾向を判別する
最低限支えられた発声が簡単にできないという場合、そもそも喋り声の段階から支えられていない、つまり弛緩しすぎていたり、過緊張だったりするので、まずはそこを改善していく必要があります。その際に自分の喋り声がどういう傾向なのかが重要になります。
喋る際に一番よく使う音域で出しやすい高さの発声をした際に、15秒程度持続して発声し続けられない場合、声帯が弛緩しすぎている可能性が高いです。
15秒程度は持続できるけど、細かい震えや揺れが勝手に起こってしまうという場合、声帯が過緊張気味になっている場合が多いです。
弛緩しすぎている場合は、声帯の接触率を高める必要があるため、それに適した子音(C/K/G/T等)や母音(ae/a等)を使った発声や、息みながらの発声を継続して行う必要があります。
過緊張気味の場合は、声帯の接触率を下げるため、あくびやため息を利用した発声や、ストロー・チューブ発声などを利用した訓練を続けましょう。
喋り声が改善した、もしくは喋り声は問題ないけど、上手く最低限支えられた発声が再現できない場合は、次のポイントを確認しながら練習してみてください。
練習方法
練習方法とは書いていますが、基本的に上に書いた2つの条件をクリアできるように意識して発声するしかなかったりします。
2つある条件を完璧にクリアすることを目標にするのではなく、まずは片方だけ、安定した持続か音量のどちらかがクリアしている発声をたくさん行い、その状態に慣れましょう。
片方だけでも難しい場合は、秒数を定めて、音量も抑えめでいいので、とりあえず思ったコントロールができている段階から練習を始める必要があります。
条件自体は2つだけなので、自分では思ってもないような音色の声や、あまり馴染みのない母音なども使ってみると案外適度な支えを感じられるかもしれません。
まとめ:土台にできる程度の安定した発声
そこそこ喉が鍛えられた人は、ここで書いているようなことを読んで「こんなの出来ない人いる?」と思ったりするかもしれませんが、結構いらっしゃいます。私のレッスンに来られる約半数くらいの方は、この記事にある最低限支えられた発声の2つの条件、どちらか一方はできないという方がほとんどです。
この発声状態ができないと、山程あるボイストレーニングのメニューのどれをやろうとしても、必要な緊張が作れず、その緊張を作りやすくするための練習すら、拠り所がなくて再現できないという状態に陥ります。
自主練習で今回の『最低限支えられた発声』を探って、中々見つからないといった場合は、早めにレッスンにお越し下さい。