前回、第13回の地声と真逆の状態の地声を練習してみましょう。同じ喉の状態での裏声は過去にも記事にしていますが、地声バージョンを解説するのを忘れていました笑
今回の発声では各種披裂筋と内筋(内甲状披裂筋/声帯筋)を明確に働かせられるように、喉頭の位置を上手に引き上げながら発声します。
『はっきりと地声が出せない』とか『どんな発声をしても息が続かない』などの悩みがある方は、今回の発声が真似できると、良い変化があるかも?なので、真似できるか練習してみてください。
鋭く硬い地声
パターン1
- 喉頭の位置は真ん中より高い位置を目指す
- 発音は明るく平べったい「イ」か「エ」
- 声量は喋り声から多少大小するくらいでOK
- 音域は地声で鳴らしやすい高さで、慣れてきたらそこから上げる・下げる
今回狙う発声のポイントは↑の通りです。ただこのパターン1は上記ポイントを全てクリアした状態ではなく、とりあえず基準となる発声です。なのでそこまで喉頭の位置も高くないですし、発音もそこそこニュートラルな「イ」母音です。
パターン2以降が上記ポイントを実践した発声なので、まずはこれくらいの発声ができるか試してみましょう。
またこのシリーズの発声全てにいえることですが、ポイントとして書いたのはあくまで取っ掛かりとしてという意味なので、慣れてきたら母音や声量、音域はどんどん広げていけるように練習しましょう。
NGパターン1
もしこのNGパターンのような、少し息っぽかったり、明瞭な母音が作れない場合は、以前に解説した『最低限支えられた発声』ができてない可能性が非常に高いため、まずはそちらを徹底的に鍛えてから、この記事を真似するようにしてください。
パターン2
パターン1よりもポイントを意識した発声状態です。喉頭の位置はパターン1と比べると明確に上がっていて、母音も平べったい潰れたような「イ」母音になっています。
時々「喉頭の位置が上げられない、上げ方がわからない」という方がいらっしゃいます。その場合は何かを飲み込む、嚥下する動作をしてみましょう。
そうすると喉頭が思いっきり上がります。これは人間の生理的な喉の動きなので、何らか疾患を抱えていない場合は絶対にそうなるものです。
なので喉頭を上げるという動作がわからない場合は、まず何かを飲み込んでみて、そこから手で触って確認しながらでいいので、上がった喉頭を維持しようとしてみて、慣れたらその状態で発声してみましょう。
その際にこのパターン2や次に紹介するパターン3のような音色をイメージすると、より喉頭が引き上がったまま発声しやすいと思います。
パターン3
ここまで喉頭を引き上げられると、明確に高い倍音成分が増えます。喉頭を発声の邪魔にならない程度までしっかり引き上げ、声帯が必要十分に閉鎖し、そして狭い「イ」母音を作るために口腔を上手く操作できるとキラキラジリジリした倍音が少しずつ混ざりだします。
逆にこの倍音が増えていかないと、今回狙っている操作が上手くできていないということなので、よくデモンストレーションを聞いて真似してみてください。
ちなみにあまりに過剰なテンションが喉にかかってしまってもこの倍音は鳴らないですし、仮声帯まで発声に関わりだすと違う非整数次倍音が出てしまうので、力いっぱい出せばいいというものでもないというのは頭に入れておきましょう。
あくまで狙うのは、少ない力でビリビリ鳴る地声発声です。
NGパターン3
今回のような鋭い発声を作ろうとしたときに、時々このNGパターン3のように舌を巻いたり硬くすることによって音色を変化させようとしちゃう方がいます。
このデモンストレーションでは発音が「イ」ではなく「リ」に近いものになってしまっています。
無意識のうちに舌が発声に関わりだすと、本当に動いてほしい筋肉が怠けてしまったり、舌と発声が不必要にリンクしてしまう癖になる可能性が非常に高いため、このNGパターンのようにはならないように気をつけてください。
喉頭を引き上げる筋肉を使い咽頭部分を狭くして、舌は母音を形成するのに必要最低限関わっているという状態を作りたいので、舌を動かすことによって喉頭の引き上げを擬似的に起こしたり、発音を強調することによって似た音が鳴っているというのは必要ありません。
まとめ:詰まった音ではなく鋭い音を狙う
今回の発声は本文中でも書いたように、余計な緊張や筋肉の介入が起きやすい発声です。なので音色はデモンストレーションと同じようになっているか、ある程度の自在性を保ったまま声を持続させられるかなど、常に気をつけながら練習しましょう。
こういう発声を探っているときにできた癖や固着というのは改善に時間がかかることがほとんどなので、少しでも不安だったり、わからないことがある場合はぜひレッスンにお越しください。